東宝の『新日本沈没』と松竹『1999』が日の目を見ることはついになかった。大森氏は「当時ではとても実現できなかっただろうね」と振り返るが、1990年代後半の時代背景を映し、本人の映画への思いを詰め込んだ脚本だったことだけは間違いない。
小松左京氏の次男・実盛氏は、幻となった2作についてこう語る。
「両作ともに原発問題や沈没後の日本人を描く意欲作で、とくに国土を失い世界へ散った日本人を描くことは、父・小松左京にとって作品本来のテーマでした。実現されなかったのは大変残念ですが、東日本大震災を経た今になって読み返しても意義深い内容です。
父が『日本沈没』に込めた“日本そして日本人とは何か?”という問いかけは今でも意味を持つと考えます。様々な映像化作品を通して、『日本沈没』が鳴らした警鐘が語り継がれることを望みます」
※週刊ポスト2021年12月24日号