患者はベッドやソファに骨折していないほうの手をつき、背中と床が平行になるように前屈し、さらに肩を傾け(写真参照)、体を前後に揺らしながら、反動を利用して腕の振り子運動を行なう。
1日1000~3000回を目安として3~5回に分け、1回10分程度が目安だ。腕の力を抜き、リラックスした状態で無理なく行なうのがポイント。腕の上がりが120度(目の上の物を取るのに必要な可動域)になることを目指して動かす。
「下垂位で振り子運動を継続すれば理想的な肩関節内での上腕骨頭の動きを再現できます。従来では手術的治療の適応とされていた転位の大きな骨折でも、この療法で対応可能です」(石黒院長)
昼間は振り子運動を行ない、夜寝るときには三角巾などでしっかりと固定し、骨折面のズレの改善を待つ。なにより、この治療は骨の癒合が得られる6~8週後まで、絶対に腕を上げないことを厳守できる患者が対象となる。
取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2021年12月24日号