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「こども家庭庁」への名称変更は政治家たちの浮世離れを象徴しているのではないか 

(時事通信フォト)

野田聖子氏はこども政策担当大臣を務める(時事通信フォト)

 政策を一元化するための組織の名前が変わったことが物議を醸している。コラムニストのオバタカズユキ氏が指摘した。

 * * *
 わけあって、数年前から、不登校やひきこもりの子とその親を支援する民間団体に関わっている。そこでたくさんの事例を見聞きしてきてつくづく思うのは、家庭というものは意外なほど脆く、いちど機能不全に陥ってしまうと独力ではなかなか立ち直れないということだ。そして、そのしわ寄せで苦しみ、病んでしまう子供たちの痛ましさである。

 不登校やひきこもりは増えているという。その解決には、機能不全家族に介入し、子供を救い出すプロの存在が重要になる。が、そうしたプロは非常に少ない。子供たちを強引に説得、連れ出して、精神科病棟や更生施設に放り込む作業で何十万、何百万の利益を貪る自称プロはあちこちで暗躍しているけれど。途方に暮れた親たちを集めて傷のなめ合いを続けるだけの自助グループは全国各地にあるが……。

 もっと事の本質を捉え、当事者である子供に寄り添い、親の過干渉やネグレクトを止めさせるプロと支援組織の育成が急がれる。国や自治体が動く価値のある現代的課題だと強く思う。

 そうした現状に問題意識を持つ自民党の参議院議員、山田太郎氏らが、今年の1月に「こども庁」の創設を提言し、その実現に向けて党内で議論が進んでいた。ところが先日、予定していた「こども庁」から「こども家庭庁」に名称を変更することとなった。些細な違いのように感じられるかもしれないが、これは新庁設立の当初の目的とそぐわない重大な改変である。

 この動きに対し、山田議員はさっそくツイッターで連投していた。

〈虐待や事故で両親を失い家庭がない子、逆に子どもが居ない家庭、家庭前提では傷つく人達がいる配慮、幼き子も読める様平仮名「こども」庁としてきました。勿論、子どもは家庭だけでなく学校、地域の影響も受けます。改めて子ども真ん中の政策からこども庁の名称を強く訴えます〉

〈こども庁は子どもの為にあって欲しいと願い、私は政策議論の最前線で与党や政府、世論を相手にここまで皆とやってきました。虐待やいじめ対策に後ろ向きな政府や党を前にむかせ現場や当事者、多くの方々と施策を詰めてきました。家庭、学校、地域でもなくこどもが中心、それがこども庁の理想のはずです〉

〈本日(12/15)党内でこども政策基本方針を議論。私は最後まで『名称は「こども庁」であるべきだ』と強く主張しましたが力及ばず。いじめ対策は勝ち取りましたが、党としての名称の決定は「こども家庭庁」に。しかし、まだ諦めません。私はギリギリまで戦っていきます〉

 ツイート中にもあるが、「こども庁」創設の目的は、子供の虐待、いじめ、不登校、貧困、自殺、教育格差といった諸問題を解決する政策を、縦割り行政に阻まれることなく、一元的に推し進めることにある。目指すは、具体的困難に直面している子供たちを社会的に救うことであり、だからとにかく「こども」の庁なのである。

 なのになぜ、そこに「家庭」がくっつけられたのか。共同通信は、〈伝統的家族観を重視する自民党内保守派に配慮〉してそうなったと報じた。日本経済新聞には、〈自民党から「子どもは家庭を基盤として成長する存在だ」といった意見が出たため修正した〉とあった。

 ちょっと待て。「伝統的家族」というのは、いったい何なのか。

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