ネットニュース編集者、ライター・中川淳一郎氏
呉:大手新聞社はそういう取材体制を維持するのも限界に来ている。
古谷:経営的にも限界を超えているのに、産経新聞は上にフジテレビがあって、ラジオのニッポン放送があってとメディアコングロマリットを築いて、連結決算で黒字だから、赤字が許容されてきてしまった。朝日にしても不動産で儲けているとか。ニューヨーク・タイムズやCNNなど米メディアはそうじゃないので、単独で黒字化しようと努力して経営を改善してきたわけです。その差があって、日本の新聞は古い体制から抜け出せない。
中川:赤字が補填されてしまうから変われないわけですね。
古谷:そもそも取材力を磨いて、いい記事を書けば新聞が売れると勘違いしている。それこそ子犬が生まれたとか、地元の誰それが死んだとか、そっちのほうが記事としては売れる。売れる記事といい記事は別なんです。
中川:東スポでトップに「カッパ発見!」って出ていたら、つい買っちゃうもんね(笑)。
呉:新聞が生き残るには、クオリティペーパーになるか、ローカル紙になるか、どちらかしかないのかもしれないね。
中川:このままだと大新聞がなくなって、ローカル紙だけが残りますよ。
【プロフィール】
呉智英(くれ・ともふさ)/1946年生まれ、愛知県出身。評論家。日本マンガ学会理事。近著に『日本衆愚社会』『バカに唾をかけろ』(ともに小学館新書)など
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)/1973年生まれ、東京都出身。ネットニュース編集者、ライター。近著に『炎上するバカさせるバカ 負のネット言論史』(小学館新書)
古谷経衡(ふるや・つねひら)/1982年生まれ、北海道出身。文筆家。日本ペンクラブ正会員。近著に『敗軍の名将 インパール・沖縄・特攻』(幻冬舎新書)
※週刊ポスト2022年1月14・21日号