“運”が“動く”。走る=運動によって一歩踏み出せた変革期
2008年の新年会、ランナーでもある知人から「走ると何かが見えるよ」と教えられた。「何かって何ですか?」「それは人それぞれ違うからわからない」──。
当時26歳。年末のホノルルフルマラソンに参加することを決めた。最初は1時間のウォーキングから。練習を重ね、初回から走り切ることができた。
「タイムは4時間半は切ったんですけど、まだ走れるのに歩いちゃおうと思ってしまう自分が悔しくて。私、めちゃくちゃ負けず嫌いなんですよ。昔からおっとり見られがちなんですけど、全然そんなことなくて。特に自分に負けることが大嫌い。だから自分でも“ドMかな?”と思うほど自分に負荷をかけてしまうんです(笑)」
まず見えたのが「頑張っている自分が好き」だということ。同時に「芸能の仕事でもあの時、頑張っていたし、ちゃんとやれているって初めて自分を認めてあげられたんです。“走る”という行為は自分と向き合う時間なんだ」という気づきを得た。
全然ダメだと思っていた自分を、自分で“認めてあげる”。この経験から、バラエティなどで大物たちと共演するときも、緊張しながらも「自分らしく、自分がどこまでできるのか追い求められるようになりました」と話す。やがて京都弁も開放。標準語に翻訳しない自分の言葉で話すことで、より個性も出せるようになった。
「あと、“運動”って“運”を“動かす”って書くじゃないですか。舞台もやりたいけど出来ないだろうなと思っていたら舞台の仕事が舞い込み、そこから朝ドラ(『カーネーション』2012年)のお仕事も。そんなステージに立つ経験なんてできるわけないと思っていたのに、“走ること”で運が動いて行ったんです」
夫との結婚にもマラソンが関わる。タレント仲間の広海・深海に“美沙子と空気が似ている人がいるよ”と紹介してもらい、交際に発展。
「私にはケンカをしてカッとなると“もういい!”と部屋を飛び出す“出ていきぐせ”があるのですが、これまでの恋愛では、彼が迎えに来てくれるのがお約束なところがありました。しかし夫は“どうせここに帰ってくるんでしょ”と悠然と構えて動じない。カッとなってる自分があほのように思え、それが逆に楽ちんで“この人にはもう一歩踏み込んだ優しさがある”と感じました」
そして『名古屋ウィメンズマラソン2012』が終わった後で正式にプロポーズ。2014年3月14日に入籍。翌年4月5日に結婚式を挙げた。このあたりは1月13日発売のフォトエッセイ『安田美沙子のRunから始まる笑顔な暮らし』(小学館)でも書かれている。