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初の「佐渡島出身」プロを生んだ 村田兆治氏の離島での取り組み

佐渡島の中学生も呼び村田兆治氏が開催していたのが離島甲子園だが、ついにプロ入りする選手が現れた(写真は2017年)

佐渡島の中学生も呼び村田兆治氏が開催していたのが離島甲子園。ついにプロ入りする選手が現れた(写真は2017年)

 2月のキャンプインを前に、新人選手たちが続々と入寮している。1月7日には、巨人から育成ドラフト6位で指名された菊地大稀(桐蔭横浜大)が、川崎市のジャイアンツ寮に入寮した。菊地は新潟・佐渡島出身者で初のプロ野球選手だ。ここに至る道のなかでは、プロ野球の“レジェンド”の地道な取り組みに背中を押されていた──。

 菊地は2014年に、全国の離島の中学が一堂に会する「離島甲子園」に佐渡市選抜として出場した経験を持つ。同大会の開催に尽力してきたのが、ロッテのエースとして活躍し、“マサカリ投法”で知られる村田兆治氏(72)だ。

「きっかけは引退翌年の1991年に日本海に浮かぶ新潟・栗島の少年球児の親御さんから“子供たちに本物の剛速球を見せてほしい”と手紙をもらったことでした。島を訪れると部員は15人しかいない。そこで初めて、対外試合どころか、紅白戦もできない離島の厳しい現状を知りました」

 村田氏はスーツの上着を脱ぎ、ワイシャツ姿でピッチングを見せた。子供たち全員を打席に立たせ、本気でボールを投げ込んだ。「島の子供たちに本物の凄さを見せることで、“本気でやっていると、いつかいいことがある”と伝えたかったんです」と村田氏は振り返る。

 後日、子供たちから「父のあとを継いで漁師になります」「病気で苦しんでいる人のために医師になりたい」といった手紙が届いたのだという。村田氏が続ける。

「自分の思いが伝わったのが嬉しかった。それから全国の離島を手弁当で回ることを決意し、プロで挙げた215勝を目標に、北は礼文島から南は与那国島まで215の離島を回って野球教室を行なおうと決めました。北海道南西沖地震と津波に襲われた奥尻島では、子供たちに“絶対に負けるな”と140キロの速球を投げ込みました。

 50か所の離島で合計100回の野球教室を開催した時、楽しむ子供たちの姿を見て『離島甲子園』を思いつきました。離島を持つ自治体に参加を呼びかけ、2008年に奥尻島や三宅島などから10チーム200人が参加して第1回大会を開催しました」

 単独のチームに限るのではなく、複数の中学の合同チームやクラブチームを中心した選抜チームなども参加可能というかたちで条件を緩やかにした。国交省や内閣府からの後援も受けるようになり、離島がある自治体の支援も集まった。多くの企業が協賛し、球児たちは遠征費ゼロで参加できる。予選もないため参加チーム数は年々増えていった。

「大会は離島が持ち回りで開催しています。東京ドームや福岡ドームに集めて、ということも考えましたが、持ち回りで開催することでお互いの離島の実態もわかる。同じ境遇にあることを共感し、新たな交流のきっかけにもなる。レギュラーの9人が揃わず、別の離島の選手に加わってもらうチームもある。

 大会はトーナメント制で優勝を争うが、負けたチームは最終日まで残って交流戦を行なう。決勝戦では負けたチームの球児たちが応援に回っています。チームを超えて一体感が生まれる。大会終了後は元プロ野球選手による野球教室をやります。離島には指導者も少ない。まずは故障をしないための練習方法を教え、そのうえで技術を指導して野球を強くさせたい。そのため、離島の指導者のほうに野球を教えることも珍しくありません」(村田氏)

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