ライフ

繁華街に続々出現する「居酒屋難民」 緊張感は途切れていた

寄って動けなくなった女性の救助にきた警察官。2022年1月、港区・六本木

酔って動けなくなった女性の救助にきた警察官。2022年1月、港区・六本木

 新型コロナウイルスの感染拡大第5波が過ぎ去ったあと、夜の街で憂さ晴らしをする生活に戻った人たちがいた。かつて週末の夜の街では当たり前の光景だったのではと思いたくなるが、多人数で距離が近い状態を長時間、居続けるのを避けたい今では、たとえ流行ピークが過ぎていても皆が作らないようにしてきた場面だろう。ライターの森鷹久氏が、居酒屋難民となり列をつくってでも以前と同じ夜の憂さ晴らしを復活させたい人たちについてレポートする。

 * * *
 新型コロナウイルスの新規感染者が急増していた2022年1月、東京・六本木の繁華街──。

 筆者が六本木の交差点を歩いていると、若い女性がひっくり返っていた。よく見ると、胸元には吐いた跡らしきものが確認され、ぐったりとした顔は血の気がなく真っ白。その傍らには、そんな女性を見てゲラゲラ笑っている男女が二人。どうやら、近くの居酒屋でしこたま酒を飲み、女性が潰れてしまったらしかった。すぐ向かいにある交番から警察官が二人やってきたが収拾がつかず、間も無く救急車が到着した。

 時刻はちょうど午前0時を周り、終電がなくたったタイミングだ。これを「新年会シーズンの光景」と言えば確かにそうなのだが、今回はそれだけが理由ではない。2021年の第5波が過ぎ新型コロナの新規感染者数が急減してから、街に繰り出し始めた人たちによる賑わいだ。付近の居酒屋店主・内藤大司さん(仮名・50代)が打ち明ける。

「2021年の冬から、ナイトクラブや居酒屋など、以前と何ら変わりない感じで営業する店が増えたんです。私の店を含む多くの店は、都の要請を守っていましたけどね。六本木にやってくる客はどんどん増えたんです」(内藤さん)

 とはいえ、深夜まで営業している店は限られているし、営業していたとしてもどの店も満席で大いに「密」状態。二軒目三軒目を目指す酔客達が、まさに「居酒屋難民」となり、街にあふれかえっていたのだという。

 筆者が六本木を訪れた1月の別のある夜も、営業している居酒屋や飲食店の前に行列ができていたし、行き場を失った酔客が、コンビニの前や駐車場などで缶ビールや缶チューハイを煽る姿を、あちこちで目撃した。そんな客を目当てに、午前0時を過ぎても営業を続ける店が増えたのだと説明する。

 また、六本木の牛丼店の前を通りかかると、赤色灯をつけたパトカーが止まっていた。何か事件でも起きたかと様子を伺うと、例の「居酒屋難民」と思われる何人もの客達が店にやってきて、注文した牛丼を目の前に、卓上で寝落ちしていたのである。その人数があまりにも多すぎて対応できないと牛丼店店員が通報した、というのがことの成り行きだったようだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン
野球人・江夏豊が球界に伝えておくべきことを語り尽くす(撮影/太田真三)
【江夏豊インタビュー】若い才能のある選手のメジャー移籍は「大いに結構」「頑張ってこいよと後押ししたい」 もし大谷翔平と対戦するなら“こう抑える”
週刊ポスト
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
《私には帰る場所がない》ライブ前の入浴中に突然...中山美穂さん(享年54)が母子家庭で過ごした知られざる幼少期「台所の砂糖を食べて空腹をしのいだ」
NEWSポストセブン
亡くなった小倉智昭さん(時事通信フォト)
《小倉智昭さん死去》「でも結婚できてよかった」溺愛した菊川怜の離婚を見届け天国へ、“芸能界の父”失い憔悴「もっと一緒にいて欲しかった」
NEWSポストセブン
11月下旬に札幌ススキノにあるガールズバーで火災が発生(右はInstagramより)
【ススキノ・ガルバ爆発】「男は復縁の望みをまだ持っていた」火をつけた男は交際相手A子さんを巻き込んで死のうと…2匹の犬を失って凶行に
NEWSポストセブン
再婚
女子ゴルフ・古閑美保「42才でのおめでた再婚」していた お相手は“元夫の親友”、所属事務所も入籍と出産を認める
NEWSポストセブン
54歳という若さで天国に旅立った中山美穂さん
【入浴中に不慮の事故】「体の一部がもぎ取られる」「誰より会いたい」急逝・中山美穂さん(享年54)がSNSに心境を吐露していた“世界中の誰より愛した人”への想い
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《真美子さんのバースデー》大谷翔平の “気を遣わせないプレゼント” 新妻の「実用的なものがいい」リクエストに…昨年は“1000億円超のサプライズ”
NEWSポストセブン