なぜこうも杜撰な金遣いができるのか…(時事通信フォト)
批判する側がかかりがちなのが「もったいないに振り回される病」。もちろん、食べ物や備品などを無駄にしない心がけは大切です。しかし「もったいない」という言葉はけっこう危険。本当の意味で有効かどうかはどっちでもよく、そう唱えることで自分を正義の側に置き、いいことを言っている陶酔感を味わわせてくれます。
一時期、コピー用紙は一回コピーや印刷をしたあと、もう一回裏側も使うのが「地球にやさしい望ましい行為」という認識が広まりました。しかし、メーカー側は、いわゆる「裏紙」を使うと紙詰まりの可能性が格段に高まり、トータルでは無駄が増えると警鐘を鳴らし続けています。実体験としても、たしかに詰まりやすいですよね。
ところが、私たちは「もったいないから」と、つい裏紙を使ってしまいます。会社でもいったん「裏紙を使いましょう」というお触れが出ると、ひとりひとりは「使わないほうがいいのに」と思っていても、なかなか撤回されません。これも「責任を取りたくないという病」と「もったいないに振り回される病」の影響です。
政府が「アベノマスクの一括廃棄」を決断できない背景には、この「3つの病」があると言っていいでしょう。政府もですが、私たちが同じ病を抱えていることも無関係ではありません。「アベノマスク」をめぐる一連のドタバタを眺めつつ、胸に手を当てて己を省みるきっかけにさせてもらいましょう。
今後、一種の奇跡が起きて、政府が「やっぱりお金がかかるので全部廃棄します」と方針を変えたときには、自己満足のための批判に精を出すのではなく、素直に拍手を送りたいところ。ひとりひとりの心がけで、広くまん延している「3つの病」を追っ払いましょう。こっちの予防には、マスクの有無や種類は関係ありません。わかりやすい戒めを与えてくれるという意味では、むしろ「アベノマスク」の出番です。