ラグビー界の閉鎖的な空気を変えようとした谷口真由美氏

ラグビー界の閉鎖的な空気を変えようとした谷口真由美氏

 歳をある程度とってくると先が見えてきてしまうから、ついつい若い人の熱い気持ちにフタをするような行動をとってしまう。だけど、なぜ新しいことに取り組まなければいけないかというと、「若い人たちの未来」を創っていかなきゃいけないからだよね。

 だから、僕たちみたいな年寄りは内心「大丈夫か?」と思っていても、若い人たちに「やってみなはれ」と言ってあげなくちゃいけない。それが長く生きてきて、それなりにポジションと経験を持った人間の務めだと思うんです。

谷口:素晴らしい! 川淵さんは、それを自ら実践されているトップですよね。

川淵:いやいや、僕にだって「年寄り病」は忍び寄ってきているんですよ。2021年の9月に女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」が始まったんだけど、僕はそのプランを聞いた当初、「そんなのやめとけ」って言ってしまった。「お客さんは入らないだろうし、チームや選手の実力もまだまだ。成功するわけがない」という判断でね。

 でも、「WEリーグ」は、成功は難しいと懐疑的に見られているなかで、田嶋幸三・日本サッカー協会会長のもと、優秀な女性たちがいろいろなアイディアを出して必死に頑張っていました。その奮闘を見てたら、ふと「そういえば、俺も昔同じだったな」って思い出したの。「Jリーグを始めるときに俺も同じこと言われたわ」って(笑)。Jリーグ立ち上げは困難だらけだったけど、それでもやり遂げることができたのは「理念」というか「大義」みたいなものがあったからです。

 現役選手だった1960年代、ドイツに遠征したことがあったんです。そのとき、立派なクラブハウスがあって、選手たちが綺麗な芝生のグラウンドでプレーしている姿を見て、心底憧れた。「こんな素晴らしい環境が日本中のいたるところにあったら、きっと日本のサッカーはもっと強くなるし、楽しくなる」──そう感じたのが、僕がJリーグ立ち上げを志した原点なんです。

 やはりスポーツに携わる者にとって、一番大事なのは「理念」です。そのことを思い出して、「申し訳なかった」「やれるだけやってみなさい」と僕は考えを改めた。いまWEリーグは「女子サッカー・スポーツを通じて、夢や生き方の多様性にあふれ、一人ひとりが輝く社会の実現・発展に貢献する」という確固たる理念を持って必死に頑張っています。

谷口:川淵さんの素晴らしいところは──若輩者が言うのも畏れ多いんですけど、一度「やめろ」と言いながらも、「申し訳なかった」と前言撤回できるところだと思うんです。

 一般的には、とくに年配で地位のある方は、一度言ってしまったことを意固地になって変えられず、「俺は成功したけど、お前らのやり方じゃダメだ」と突っぱねてしまう人が多いと思うんです。つい最近、東京五輪をめぐるゴタゴタでも、そういう方がたくさんおられましたよね(笑)。だけど川淵さんは、自分が言われたことを思い出して、素直に考えを変えることができる。

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