昨今の日本社会においては「男女平等」への意識や取り組みが高まっているようにみえるが、実は団側が当時から持っていた人権意識やジェンダー観と、根本的にはそれほど変わっていないのではないか。今回の取材で、著者はあらためてその問いにぶち当たった。
「政治の世界でもそうですが、物事の決定権は男性にあります。構造的に女性の発言が世の中で認められにくい。全然変わっていないとは思いませんが、遅いかなと。今までのライター人生では『減るもんじゃない』の部分は削られていましたが、今回は妥協しなかった。それで受賞できたのがすごく嬉しかったです」
今は亡き「乙女」から託された思い、そして著者の思いが結実した労作である。
【プロフィール】
平井美帆(ひらい・みほ)/1971年大阪府吹田市生まれ。高校卒業と同時に南カリフォルニア大学に入学、舞台芸術と国際関係学を学ぶ。卒業後は一時東京で演劇活動に携わるも1997年に再び渡米、執筆活動を開始する。2002年から東京に拠点を移す。著書に『中国残留孤児 70年の孤独』『獄に消えた狂気 滋賀・長浜「2園児」刺殺事件』『イレーナ・センドラー ホロコーストの子ども達の母』『あなたの子宮を貸してください』など。本書で第19回開高健ノンフィクション賞を受賞。
構成/水谷竹秀 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2022年2月18・25日号