体形が似ていたため、ヒデキの影武者を演じることもあった
西城さんも芳野も180cmを超える長身、ともにスリムで長髪。遠目から見て似ていたことから、コンサート会場やテレビ局に出入りする際は、芳野が影武者を務めていたという。
「タクシーに乗って、コートを頭からかぶって出て行くと、ファンの子たちが追いかけてくる。カーチェイスをしながら遠回りしてホテルに向かい、タクシーから降りて『お疲れさま』と声をかけると、ぼくだと知ってみんながっかり。そのうち通用しなくなったけど、振り返るとあれも楽しかった」
ヒデキのサポートから離れることになった後、芳野はSHOGUNのメンバーとして『夜ヒット』に出演。同番組でアーティスト同士としての共演はかなわなかったものの、1999年から芳野は西城さんのツアーサポートに加わり、2人の交流は晩年も続いた。1983年から35年にわたって西城さんのマネジャーを務めた片方秀幸さんはこう言う。
「『夜ヒット』の放送は夜遅いので、出演者は終了後すぐに帰りますが、秀樹さんは必ず自分の出演シーンをVTRで確認していました。
何を言うでもなく、ただひたすら見るだけ。数回繰り返し見直して、納得してから局を離れます。常に客観的に自分を見て、よりよく魅せるにはどうしたらよいかを自問自答していたのでしょう」
番組の立ち上げから参加し、1977〜1987年にプロデューサー兼総合演出を担当した疋田拓さんも、こう振り返る。
「ヒデキはとにかく真面目。常に全力でぶつかってくる。だから、スタッフも期待の上をいく演出をしようと本気で取り組んできました」
熱い出演者と熱いスタッフで作り上げた番組ゆえ、『夜ヒット』はいまなお伝説として語りつがれているのだろう。