飯田が拠点を置く関西では、東京ほどのサウナブームではないという(写真:小倉雄一郎)
──近年は、華麗なタオル捌きやトークなどを武器とする熱波師が次々と現れて、熱波師ブームが起こりつつありますよね。
飯田:お客さんに「この人なら自分の身体を預けられる」と安心してもらえるように、僕はアウフグースをする間はなるべくずっとコミュニケーションを取るようにしています。どこの誰だかわからない相手の前で裸でいるのって、やっぱり居心地が悪い部分もあるじゃないですか。だから自分がどういう人間で、どういう目標をもっているのか、そういうことも含め伝えています。もちろん冗談も言いますよ。「このアロマオイル、なんぼなんですよ」って値段を明け透けに話した後、少しこぼして、「あっ。150円が!」とか(笑)。客イジリもしますし、そういうトーク術は、バンド時代のMCで鍛えられた部分だと思います。
ミュージシャン復帰の可能性は
──脱退の経緯が経緯だったので、現在はお元気に暮らしているようで安心しました。
飯田:熱波師として告知などのためにSNSを始めたんですが、バンド時代のファンの方から「生きていてよかった」とDMが届いたことがあります。あとは前のバンドのPA(音響)さんとサウナで偶然再会して、お互い泣きそうになりました……っていうか、実際ちょっと泣きました。そのPAさんもファンの方たちも口を揃えて言ってくれるのは、「元気そうで安心した」ということです。そういうふうに思ってもらえるなら、人前にある程度出るような仕事を選んで正解だったのかなと感じています。
──いつかミュージシャンとして復帰する可能性は?
飯田:その可能性は全く考えていません。もう楽器は全然触っていませんし、一時は音楽を聴くことすらできませんでした。ただの騒音にしか聞こえず、動悸が止まらず、「音楽=怖いもの」になってしまったんです。音楽が流れてくるので、テレビやコンビニも避けて生活していました。
今は随分マシになったので、前のバンド( KANA-BOON )の曲がコンビニで流れてきても「ええバンドやな」と素直に感じることができます。まだ会ったり、連絡を取ったりはできませんが、メンバーのことは今も好きです。たくさん迷惑をかけてしまったけど、彼らのことは応援しています。