【表1】ウクライナを拠点に反ロシアのサイバー活動をする組織(筆者作成)
同じくウクライナのためにロシアに対してDDos攻撃やハッキングを攻撃手法としている組織は多い。ウクライナを拠点に反ロシアのサイバー活動をしているのは、別掲の【表1】のような組織だ。
こうしたグループや個人の中には、情報統制で戦争の実態が伝わっていないロシア国民に、ロシアの攻撃で被害を受けるウクライナの窮状を伝えるメールなどを送りつけるなどしている人たちもいる。
また国外を拠点にして、ウクライナのために動いている組織もある。「Belarusian Cyber Partisans(ベラルーシ・サイバー・パルティザン)」は、ランサムウェア攻撃(身代金要求型ウィルス)でロシアに攻撃を仕掛けている。ランサムウェアは攻撃相手のコンピューターの情報を勝手に暗号化してしまって使えなくしてしまうため、敵のシステムを不全にするには効果がある。
またフランスに拠点を置き、普段は中国への攻撃を行なっている「AgainstTheWest」はランサムウェアだけでなく、ハッキングによって情報搾取も実施する。最近では、ランサムウェアを感染させて内部の情報を盗む手口が主流だが、この「AgainstTheWest」はそういう攻撃も行なっていると見られている。
さらにフィンランドには、「NB65-Finland」という組織がいて、ロシアへDDoS攻撃や、ウェブサイトやサーバーにハッキングを実施している。トルコからも、「Monarch Turkish Hacktivists」というハクティビスト組織が参加している。
一方でロシア側にも、ウクライナへ攻撃する組織が存在している。
ロシア側の“民兵”はフェイクニュースを量産
そもそも、ロシア政府は、情報機関が犯罪組織や民間企業などを駆使してサイバー攻撃を実施しているとみられている。ロシアといえば、旧ソ連のKGB(ソ連国家保安委員会)が有名だが、実は、ソ連が崩壊した後も、KGBは生き残ったと言っていい。KGBはソ連崩壊後、主に国内を担当する部門が現在のFSB(ロシア連邦保安庁)となり、国外諜報部門がSVR(ロシア対外情報庁)として任務を続けている。こうした組織が政府系サイバー攻撃を担当している。
また、それ以外にも軍のスパイ機関であるGRU(ロシア連邦軍参謀本部情報総局)という組織もサイバー攻撃を実施している。