90年代初頭のマルチメディア革命。それに近い変革が、今、AIの世界で起きています
AIは今後、どのような進化を続けるのか。最後に、Staさんが描く未来像を聞いた。
「先端研究者の間では、石ころと石ころが会話するような世界ができないか、ということが言われています。身近な例で言いますと、『防波堤』って、予想し得る最大の波の高さに備えて作られていますよね。でも、IoTが進み、いろんなものにAIが埋め込まれるようになると、高い防波堤は必要なくなるかもしれない。高い波を観測したら、周囲の石ころが勝手に集まってきて防波堤を作り、波が収まったら崩してくれる、みたいなことができるようになるからです。そのためにはAI同士のマルチドメインの通信が必要です」
ドメインとは領域のことで、現状のAIは基本的に、「文章」「画像」「将棋」など、各ドメイン内でしか学んでいないという。しかし今後、ドメイン同士がつながる大きな変革がやってくるだろうとStaさんは予測する。
たとえば高齢者など、デジタル技術を苦手とする人ほど、あるいはアナログに親しみを感じている人ほど、AIに苦手意識を持ち、ネガティブに反応するかもしれない。
だが、どうか悲観しないでほしい。Staさんはこうも教えてくれた「コンピューターを知らない人にこそ、AIを喜んでもらえるのではないかと思っています」。そう、Staさんの理想はあくまでも「友達」のような、人間のあいまいさを肯定するAIなのだから。
【プロフィール】
Sta(すた)/1988年東京都生まれ。ゲームクリエイター、作曲家、プログラマー。幼いころからパソコンに興味を持ち、9歳で200本のゲームを作成。デジタルメディア研究所の橘川幸夫氏に認められる。小学校1年生から不登校となり、『新潮45』特集21世紀の日本を支える「21人の若き天才」に「すでに伝説的な不登校小学生」として取り上げられた。2012年6月iOS・Android向け音楽ゲーム・アプリ「Tone Sphere」をリリース。企画からプログラム・グラフィック・音楽など全てを自身が手がけ2021年までに世界で120万ダウンロードを達成。「AIのべりすと」も、当初は次にリリースする予定のゲームで使う目的で開発されたものである。株式会社Bit192代表。
AIのべりすとを使った「第1回 AIのべりすと文学賞」についてはこちらから
https://demeken.net/ai-novelist/