国内

福島県飯館村の復興のシンボル 夫婦の願いが込められた3000本の桜並木

満開の桜を前に顔をほころばせる征男さんと妻のツタ枝さん。飯館村の復興を心から願っている

満開の桜を前に顔をほころばせる征男さんと妻のツタ枝さん。飯館村の復興を心から願っている(2021年撮影)

 全国的に桜の開花が始まり、いよいよ春本番。多くの出会いと別れが訪れる、人生の節目ともいえるこの季節。心に残るあの日の思い出には、美しく咲き誇る桜の姿があった──。

 福島県飯舘村。ここには現在、約3000本もの桜の並木道があり、多くの人を楽しませている。桜を植樹したのは飯舘村に住む会田さん夫妻だ。

「地元の飯舘村に名所を作りたいと思って植え始めたのがきっかけです」と、話してくれたのは夫の征男さん(77才)。

「桜の植樹を始めたのはいまから25年前。桜のトンネルみたいになったらかっこいいなと(笑い)」

 征男さんはかつて養蚕業を営んでおり、もともと桑畑だった7ヘクタールの土地に、桜を植えることを思いついた。しかしその最中、息子さんを交通事故で亡くす──会田さん夫妻は、息子さんへの追悼の思いも込めて、植樹本数を増やしていった。そしてその数が2000本に達した頃、東日本大震災が起きた──。

「私たちは隣の相馬市で避難生活をすることになりました。残してきた桜のことが心配で、毎朝のように避難場所から車で1時間ほどかかる飯舘村に行き、草刈りをして、夜に避難場所に帰る暮らしを続けていました。人がいなくなったので、イノシシがよく出るようになり、イノシシが桜の根元を掘り返すんですよ。その下にいる虫なんかを食べるためにね。掘られた桜は根から枯れてしまうので、とにかく気が気でなくて……」

ソメイヨシノとオオヤマザクラのアーチ。震災でここを離れた人たちも、開花の頃には桜を見に戻ってくるという

ソメイヨシノとオオヤマザクラのアーチ。震災でここを離れた人たちも、開花の頃には桜を見に戻ってくるという

 会田さん夫妻が飯舘村に戻ったのは2017年のこと。桜は彼らの尽力で約7年もの間、その本数も美しさも守られたのだ。

「まだ震災前のようにはいきませんが、少しずつ住民も戻り、再びこの桜を楽しんでくれるようになりました。まだまだこれからですが、多くの人に楽しんでもらえるよう、これからも大切に育てます」

 そう笑う征男さん。彼らの夢はかない、故郷の名所であり、復興のシンボルとなった桜並木。天国の息子さんも花見をしていることだろう。

母に届け!病院での花見

 宮崎県の主婦・堺良子さん(53才・仮名)はかつて、母親と一風変わった花見を楽しんだという。

「私の住んでいる宮崎県日南市には、花立公園という桜の名所があります。母は毎年、そこへ花見に行くのを楽しみにしていました。でも、その年は春先に入院することになり、花見ができなかったんです。だいぶガッカリしていました」

 毎年の楽しみがなくなって落ち込む母。何とかしてあげたかった堺さんは、せめて写真でも見せようと、花立公園へ行ったという。

「ところがその年は開花が早かったのか、すでに散っていたんです。途方に暮れていると、ちょうど青森県で働く息子から電話が。そのとき思い出したんです! 母が新婚旅行に父と訪れたという、弘前公園のことを。それで、息子に頼んで、弘前公園の桜を写真と動画に撮って送ってもらいました」

 青森はこのとき、ちょうど桜が満開の時期だったという。

関連記事

トピックス

水卜麻美アナ
日テレ・水卜麻美アナ、ごぼう抜きの超スピード出世でも防げないフリー転身 年収2億円超えは確実、俳優夫とのすれ違いを回避できるメリットも
NEWSポストセブン
撮影現場で木村拓哉が声を上げた
木村拓哉、ドラマ撮影現場での緊迫事態 行ったり来たりしてスマホで撮影する若者集団に「どうかやめてほしい」と厳しく注意
女性セブン
退職した尾車親方(元大関・琴風)
尾車親方、相撲協会“電撃退職”のウラで何が…「佐渡ヶ嶽理事長」誕生を目指して影響力残す狙いか
週刊ポスト
5月13日、公職選挙法違反の疑いで家宅捜索を受けた黒川邦彦代表(45)と根本良輔幹事長(29)
《つばさの党にガサ入れ》「捕まらないでしょ」黒川敦彦代表らが CIA音頭に続き5股不倫ヤジ…活動家の「逮捕への覚悟」
NEWSポストセブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
田中みな実、寝る前のスマホ断ちで「顔のエラの張り出しがなくなった」 睡眠の質が高まり歯ぎしりが軽減された可能性
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン