イラスト/ico.

(イラスト/ico.)

「母は、懐かしいと喜んでくれました。ベッドの上ですが、お花見をさせてあげられ、私も本当にうれしかったですね」

 その後、母親は順調に回復。毎年見事な花を咲かせる桜の生命力は、見ている人にも元気を与えてくれるのだろう。

桜博士に聞く桜の楽しみ方

 2018年に新種の「クマノザクラ」を発見した“桜博士”こと勝木俊雄さんに、「桜の楽しみ方」について聞いた。

──日本固有の桜の種類はどのくらいあるのですか?

勝木:植物学でいう日本固有とは、日本だけに自生しているもの。この意味だと、チョウジザクラ、マメザクラ、ヤマザクラ、クマノザクラ、オオシマザクラの5種になります。

──勝木さんが発見した「クマノザクラ」も日本固有?

勝木:はい、日本固有の新種です。クマノザクラの分布域は、紀伊半島南部の奈良・三重・和歌山の3県にまたがる南北およそ100kmの範囲。初めて見たのは、調査で紀伊半島に行ったとき(2016年)です。

 そのときはオオヤマザクラに似ていると思ったのですが、それにしてはずいぶん花弁のピンクが鮮やかで、きれいだなと……。それにオオヤマザクラとは、分布域が異なったのが、気になりました。

 その後、本格的に調査を進め、カスミザクラと近縁のこれまで報告されていない分類群であることがわかりました。

 もしかしたら、新種ではないかとワクワクしましたね。分布域の中心が、和歌山県と三重県を含む熊野だったため「クマノザクラ」と名づけました。

──ここに注目すれば、より桜観賞が楽しめるというポイントを教えてください。

勝木:公園などに植えられている桜を見る場合は、どのような過程で植えられたのかを知るとよりおもしろいですよ。栽培品種の桜は、作った人の思いが込められているので、それぞれに人と桜との歴史があります。どこで生まれて誰が名づけたのか、なども調べてみてください。

 * * *
 桜はただ見ているだけでも、その美しさを楽しめるが、植樹の過程など、誕生の歴史を知ると、より深い観賞ができそうだ。

【プロフィール】
勝木俊雄さん/1967年福岡県生まれ。国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 九州支所 地域研究監。20年以上にわたり桜を研究。主な著書に『桜の科学』(SBクリエイティブ)、『桜』(岩波書店)など。

取材・文/川辺美奈子 

※女性セブン2022年4月7・14日号

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