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山下智久『正直不動産』が奇妙な面白みを感じさせるのはなぜか

山下智久

山下智久が不動産営業マンを演じる

 人気コミックのドラマ化が必ずしもうまくいくとは限らないがこの作品はどうか。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 NHK総合で始まったドラマ『正直不動産』(火曜日午後10時)には奇妙な面白みが詰まっています。何が奇妙なのか。何がそう感じさせるのか。

 まず主人公を演じる山下智久さんの存在です。肌はシワがなくつるんとして表情も一定、声は敢えて抑揚なくどこかAIロボットみたいな奇妙な人工感が面白い。そのポーカーフェィスは何を考えているかわからない主人公像とピタリ調和しています。

 アイドルとして活動してきた拠点ジャニーズ事務所を退所し、今では活動の場を海外にも広げる山下さん。有名女優たちと数々の浮き名を流し、夜の六本木での遊びが行き過ぎてか器物破損で書類送検されたりと、超二枚目アイドル時代からどこか「優等生」の枠にはまらない独特の雰囲気とワイルドさを漂わせてきました。

 そんな山下さんが持つ印象を色に例えれば、透明とは言えずしかしブラックでもなく、微妙に濁った中間色。酸いも甘いも体験した37才山Pの「正直不動産」、まさにキャスティングは絶妙です。

 その物語は……嘘八百、口八丁で営業成績ナンバー1、登坂不動産のエース永瀬財地(山下智久)。またの名を「ライアー(嘘つき)永瀬」。平気でウソを絡めながらの営業トーク。ところがたまたま古い祠を破壊したことで祟られてしまいウソがつけない体質になり……という荒唐無稽さが見所です。

 そもそも強引な営業や不透明な情報が残っている業界ゆえ、『正直不動産』というタイトル自体にかなりの皮肉が込められています。しかも、ドラマが始まる直前にさらなる「不正直」な事件が発覚し、木下ほうか氏降板で運も尽きたかと思われた。ところが木下氏の登場場面を全てカットして「再編集に2000万円かかる」といったニュースが話題となり同情も集まり注目されたという経緯も何だか奇妙です。

 NHKは再編集作業にパワーを注入、反転攻勢に出た。宇佐川隆史プロデューサーがズバリこう伝えています。「想像をはるかに超える反響と、再編集への“激励のお電話・メッセージ”を多数いただいております」「せっかく編集をしなおすのであれば、もっと面白くしようと、スタッフ総出で奮闘中」(「ORICON NEWS」 2022.4.11)。禍転じて福となすか、お手並み拝見です。

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