芸能

「坂」のフィルム、「階段」のデジタル撮影 旧作映画デジタル・リマスターの裏側

デジタル・リマスターを考える上で大切なことは?

デジタル・リマスターを考える際の重要なポイントは?

 フィルムで撮った作品をデジタル・リマスターする背景を前回、東映ラボ・テックの根岸誠氏にうかがった。その際に出たのが、元のフィルムには膨大な情報量が記録されていて、ようやくデジタルの機材がそれに追いついてきたという話。つまり、フィルムの方がデジタルよりも情報量が多いということだ。このことはデジタル・リマスターについて考える際の根本として最も重要な点といえる。映画史・時代劇研究家の春日太一氏が、再び根岸氏に聞いた。

 * * *
根岸:デジタルはゼロか一かの世界なので、画と画の間の繋ぎ目が階段状になっているんです。その画質の高低は、階段がどれだけ細かいかということで決まります。一方フィルムはアナログなので階段ではなく「坂」なんです。

――段ではなく一本の線だと。

根岸:フィルムの情報をデジタル化するということは、いくつの階段によって坂としてどう表現するかということになります。それがデジタル・リマスターなのです。この技術が日々進化してきて、現在では線に近くなってきています。

――階段の幅が狭くなってきて、遠くから見ると線に見えるぐらいのところまで来ているということですね。

根岸:線に「見える」。まさにそうです。線そのものではないのですが、段が細かくなって線に見えているわけです。

――逆に言うと、フィルム、つまりアナログの「線の情報量」状態が本来はベストなわけですね。

根岸:それがアナログの良さです。フィルムってすごく滑らかな映像表現ができているんですね。だから、それをデジタル化するというのは、どうしても技術的にいろいろ困難な部分があります。

――機材が開発されてきたことで、その困難は減ってきた、と。

根岸:特にここ二十年ぐらいは飛躍的な進歩を遂げてきています。

――考えてみると、初期DVDソフトの映像ってカクカクしている印象がありました。まさに、段の幅が大きい感じでした。そこもやはり機材の問題でしょうか。

根岸:機材の問題ですね。DVDが出た頃はSD(Standard Definition)という、低い解像度の時代だったので、今から比べると、もう本当に雲泥の差がありますね。

――HDリマスターという言葉が使われますが、Hi Definition、高い解像度で作り直しましたよ、ということなのですね。4Kになるとその解像度がさらに上がる。

根岸:そういうことです。

関連記事

トピックス

同僚に薬物を持ったとして元琉球放送アナウンサーの大坪彩織被告が逮捕された(時事通信フォト/HPより(現在は削除済み)
同僚アナに薬を盛った沖縄の大坪彩織元アナ(24)の“執念深い犯行” 地元メディア関係者が「“ちむひじるぅ(冷たい)”なん じゃないか」と呟いたワケ《傷害罪で起訴》
NEWSポストセブン
電動キックボードの違反を取り締まる警察官(時事通信フォト)
《電動キックボード普及でルール違反が横行》都内の路線バス運転手が”加害者となる恐怖”を告白「渋滞をすり抜け、”バスに当て逃げ”なんて日常的に起きている」
NEWSポストセブン
入場するとすぐに大屋根リングが(時事通信フォト)
興味がない自分が「万博に行ってきた!」という話にどう反応するか
NEWSポストセブン
過去の大谷翔平のバッティングデータを分析(時事通信フォト)
《ホームランは出ているけど…》大谷翔平のバッティングデータから浮かび上がる不安要素 「打球速度の減速」は“長尺バット”の影響か
週刊ポスト
16日の早朝に処分保留で釈放された広末涼子
《逮捕に感謝の声も出る》広末涼子は看護師に“蹴り”などの暴力 いま医療現場で増えている「ペイハラ」の深刻実態「酒飲んで大暴れ」「治療費踏み倒し」も
NEWSポストセブン
初めて沖縄を訪問される愛子さま(2025年3月、神奈川・横浜市。撮影/JMPA)
【愛子さま、6月に初めての沖縄訪問】両陛下と宿泊を伴う公務での地方訪問は初 上皇ご夫妻が大事にされた“沖縄へ寄り添う姿勢”を令和に継承 
女性セブン
中村七之助の熱愛が発覚
《結婚願望ナシの中村七之助がゴールイン》ナンバーワン元芸妓との入籍を決断した背景に“実母の終活”
NEWSポストセブン
松永拓也さん、真菜さん、莉子ちゃん。家族3人が笑顔で過ごしていた日々は戻らない。
【七回忌インタビュー】池袋暴走事故遺族・松永拓也さん。「3人で住んでいた部屋を改装し一歩ずつ」事故から6年経った現在地
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で天皇皇后両陛下を出迎えた女優の藤原紀香(2025年4月、大阪府・大阪市。撮影/JMPA)
《天皇皇后両陛下を出迎え》藤原紀香、万博での白ワイドパンツ&着物スタイルで見せた「梨園の妻」としての凜とした姿 
NEWSポストセブン
“極度の肥満”であるマイケル・タンジ死刑囚のが執行された(米フロリダ州矯正局HPより)
《肥満を理由に死刑執行停止を要求》「骨付き豚肉、ベーコン、アイス…」ついに執行されたマイケル・タンジ死刑囚の“最期の晩餐”と“今際のことば”【米国で進む執行】
NEWSポストセブン
何が彼女を変えてしまったのか(Getty Images)
【広末涼子の歯車を狂わせた“芸能界の欲”】心身ともに疲弊した早大進学騒動、本来の自分ではなかった優等生イメージ、26年連れ添った事務所との別れ…広末ひとりの問題だったのか
週刊ポスト
2023年1月に放送スタートした「ぽかぽか」(オフィシャルサイトより)
フジテレビ『ぽかぽか』人気アイドルの大阪万博ライブが「開催中止」 番組で毎日特集していたのに…“まさか”の事態に現場はショック
NEWSポストセブン