国際情報

プーチン「イメージ戦略」の敗戦【前編】チャップリン研究者が読み解くウクライナ侵攻

プーチン大統領のイメージ戦略をチャップリン研究者が分析(写真/AFLO)

プーチン大統領のイメージ戦略をチャップリン研究者が分析(写真/AFLO)

 ロシアによるウクライナ侵略は、軍事的な戦いであると同時に、自国への支持を広げるためにインターネット上で映像などを拡散する「イメージ」の闘いでもある。その点が“新しい戦争”などと表現されるが、プーチン大統領とゼレンスキー大統領のイメージ戦略の衝突は、80年以上前の「独裁者」と「喜劇王」の闘いと重なる──そう指摘するのは『チャップリンとヒトラー』(岩波書店刊)の著者である脚本家の大野裕之氏だ。【前後編の前編】

 * * *
 端的に言って今回の戦争において、すでにプーチンは負けている。僕はそう思っています。

 軍事的には大国・ロシアがまだ勝てるのかもしれません。しかし、とりわけ西側諸国では“プーチンは独裁者で悪者である”という「イメージ」が定着して、名だたるグローバル企業がロシアから引き揚げました。

 仮に武力の戦いに勝利したところで、ロシアは今後、何十年も「負のイメージ」を引きずることになります。そういう意味で、ロシアはすでに負けている。太平洋戦争での「侵略のイメージ」から戦後77年経っても逃れられない日本人は、それを理解できるはずです。

 対するゼレンスキーはSNSなどを駆使して世界中から同情と共感を集めています。イメージ戦略において、完全にプーチンを上回っていると言えるでしょう。

〈そう語るのは、チャップリン研究の専門家として国際的に活動する大野裕之氏(日本チャップリン協会会長)だ。自身は「国際政治の専門家ではない」と前置きしつつも、ロシアのウクライナ侵略について鋭い考察を述べていく。今回の戦争は、第二次世界大戦当時の独裁者・ヒトラーと、喜劇王・チャップリンが「メディアという戦場」において「イメージという武器」で争った歴史と重なる部分が多くあるというのだ。〉

 チャールズ・チャップリンは1889年4月16日、英国・ロンドンの貧民街に生まれました。アドルフ・ヒトラーがオーストリアで生まれたのはそのわずか4日後のこと。この2人は、メディアという戦場で闘いを繰り広げます。まずはそのことを振り返りましょう。

 両者は映画というメディアを通じて世界を席巻した人物と言えます。

 1921年にチャップリンが制作した映画『キッド』は、全世界でほぼ同時に上映されました。世界中の人が「動いている人物のイメージ」を共有したのは、この作品のチャップリンが初めてです。つまり初めての世界的な大スターでした。

 一方のヒトラーは地域政党の政治家から、演説の上手さでのし上がります。その際に大きな役割を果たしたのが、彼の弁舌の巧みさを大衆に伝える「トーキー映画」でした。ちょうど「サイレント映画」から時代が変わるタイミングで、イメージと宣伝の力でドイツの最高指導者となり、一時は世界を恐怖に陥れるほどの力を握りました。

関連記事

トピックス

【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン
どんな演技も積極的にこなす吉高由里子
吉高由里子、魅惑的なシーンが多い『光る君へ』も気合十分 クランクアップ後に結婚か、その後“長いお休み”へ
女性セブン
『教場』では木村拓哉から演技指導を受けた堀田真由
【日曜劇場に出演中】堀田真由、『教場』では木村拓哉から細かい演技指導を受ける 珍しい光景にスタッフは驚き
週刊ポスト
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
《視聴者は好意的な評価》『ちびまる子ちゃん』『サンモニ』『笑点』…長寿番組の交代はなぜスムーズに受け入れられたのか?成否の鍵を握る“色”
NEWSポストセブン
わいせつな行為をしたとして罪に問われた牛見豊被告
《恐怖の第二診察室》心の病を抱える女性の局部に繰り返し異物を挿入、弄び続けたわいせつ精神科医のトンデモ言い分 【横浜地裁で初公判】
NEWSポストセブン
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
各局が奪い合う演技派女優筆頭の松本まりか
『ミス・ターゲット』で地上波初主演の松本まりか メイクやスタイリングに一切の妥協なし、髪が燃えても台詞を続けるプロ根性
週刊ポスト
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン