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「国際ロマンス詐欺」男性被害者の実例 なかなか情報共有が進まない理由

父が深夜までSNSで知り合った誰かとさかんにやりとりをするようになったが、誰と親しくなっているのかが分かったのは何度も振込してしまった後だった(イメージ)

父が深夜までSNSで知り合った誰かとさかんにやりとりをするようになったが、誰と親しくなっているのかが分かったのは何度も振込してしまった後だった(イメージ)

 コロナ禍でも「国際ロマンス詐欺」の被害相談が増えているとたびたび報じられている。それらの報道は総じて、SNS経由で知り合った男性から仮想通貨への投資などを持ちかけられる、といったように、被害者は女性のケースばかりだ。結婚詐欺については男女比の差はほとんどないという調査結果もあるが、国際ロマンス詐欺に限っては女性に被害が偏っているのだろうか。ライターの森鷹久氏が、被害届を出すこともなく、家族以外に知られることがないまま泣き寝入りする「国際ロマンス詐欺」の中高年男性被害者の存在についてレポートする。

 * * *
 埼玉県在住の自営業・大島裕隆さん(仮名・40代)が父親(60代)の異変に気がついたのは、コロナ禍でほとんど外出の機会がなかったにも関わらず、今年になって銀行やコンビニへ頻繁に出かける姿を見かけるようになったことがきっかけだった。

「もともと外出しない父でしたが、コロナ禍でますます出かけなくなりました。ところが、急にコンビニや銀行へ行き出すようになったんです。年金や保険の関係、と言っていたので最初は不自然だと思っていなかったのですが、週に2回も出かけることもあり、さすがにおかしいと思い始めました。でも、詳しく聞こうとすると怒り出すから、あまり踏み込んで聞けませんでした」(大島さん)

 父の異変はそれだけに留まらなかった。年を追うごとに早寝早起きが習慣になっていた父が、夜更かしをして明け方近くまで自室のパソコンと向き合い、誰かしらとメッセージをやりとりしているかのようでもあった。妻と大学生の息子に、どうやら夜中にネットで誰かを熱心にやりとりしているようだと話すと、「絶対に騙されている」はずだから、今すぐに確認すべきだと強く言われたのだった。

「マルチ商法とか投資詐欺とか、そういうことかなと思い、母に言って父の銀行口座履歴を確認してもらったら、月に何度も数万円程度の額を誰かに入金していたことがわかりました。相手方の口座名義は、全部日本人の女性名ですが、時期によって名前も違う。最初は何が何だかわかりませんでしたが、息子にまさかということを言われました」(大島さん)

 ちょうどその頃、テレビや新聞に大きく取り上げられていたのは、30代40代の未婚女性が主に被害に遭っていた「国際ロマンス詐欺」という事案。テレビニュースでそのことを知った大島さんの息子は「おじいちゃんはこれに騙されている」と断言した。報道されているのは女性の被害ばかりなので、半信半疑のままネット検索してみたが、中高年の男性をターゲットにした「国際ロマンス詐欺」について報じる記事は見つけられなかった。

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