魅力的な外国人女性たちとネットでデートしている気分だったらしい(イメージ、dpa/時事通信フォト)
「いろんなことを考えましたよね、過去付き合いのあった女性に援助しているとか……。確たる証拠はありませんでしたが、息子が言う『国際ロマンス詐欺』とまではいかなくても、SNSを介した女性とのやりとりが原因ではないかと疑っていました」(大島さん)
真正面から問うても「怒るだけ」だった父だが、「SNSの設定を確認してあげる」と息子が機転をきかせて申し出ると、あっさり快諾。アカウントを見るとそこには、日本人女性はもちろん、美しい風貌の外国人女性と思しきユーザーと、1日に何度もメッセージのやり取りをしていた痕跡が確認できたのだ。
「まさに国際ロマンス詐欺の男性版、といった感じでした。どこの国の方かわからない女性から『遺産を受け取ってほしい』と持ちかけられるだけでなく、若い日本人女性には『コロナで仕事がなくなったから助けて』とメッセージをもらっていたりしました。父は、馬鹿正直にそられ全てに返信していました」(大島さん)
相手方からのメッセージは、全て日本時間の深夜から明け方にかけて送られていた。父は、一刻も早く返信を返そうと、夜更かししていたのではないかと苦笑する。
「結局、4人くらいの女性に合計で150万円ほどを送っていたそうで、送金先の口座は毎回バラバラ。彼女たちはおそらく困っているわけでもなんでもなく、写真も身の上話もすべて嘘で騙されたのだと伝えると、父は押し黙って何も言わず自室に戻りました。相当、恥ずかしかったのでしょう。私も気持ちを察してそれ以上は言いませんでした」(大島さん)
女性をターゲットにした国際ロマンス詐欺は、大島さんの父親と比べると若い世代が狙われる傾向にある。一方、男性を狙った国際ロマンス詐欺は、地位も家族もあるもっと上の世代の男性が狙われることが多いのかもしれない。そのため被害に遭遇しても、恥ずかしいし世間体も気になるのか、人知れず泣き寝入りしているようだ。
九州在住の教員・松井史子さん(仮名・40代)も、70代の父親が、SNSを通じて知り合ったという相手に籠絡され、数十万円を失ったのだと吐露する。
「父はコロナ禍になって以降SNSにハマり、旧友たちと頻繁にメッセージをやりとりしていたんです。SNSに必要以上に個人情報を書き込むべきではない、アカウント設定も『友人限定公開にして』とアドバイスしていたのですが、あまり真剣に聞いていなかったようでした」(松井さん)