北朝鮮では新型コロナウイルス感染が疑われる発熱者数が連日20万人以上にのぼっている。しかし、北朝鮮国内には感染防止のためのマスクや防護服などの医療用品や、肝心のワクチンや薬品が不足しているため、北朝鮮政府は、中国政府に支援を要請して、大量の医療物資を空路で輸入していたことが明らかになった。さらに、5月16日にも追加の物資を大量に搬入している。
事態を重視した韓国や米国も北朝鮮に対して支援を申し出ているが、北朝鮮側からの返答はないという。一方、市民はロックダウンで食糧不足に陥っており、不満が高まっていると米政府系報道機関「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」が報じた。
北朝鮮は5月12日、金正恩朝鮮労働党総書記が党政治局会議を開催し、首都平壌で初めて新型コロナの感染を認め、「建国以来の大動乱」と表現し、強い危機感を示した。その後、当局は北朝鮮全土の都市にロックダウンを指示している。
しかし、北朝鮮の情報筋はVOAに対して、北朝鮮が先月末から中国東北部で解熱剤、酸素マスク、体温計、防護服など新型コロナウイルスの感染防止のための医療用品を大量に発注し始めていたことを明らかにしており、金総書記が感染拡大を発表する2週間以上も前に、すでに北朝鮮国内では感染が拡大し収拾が付かない状態になっていたとみられる。
世界保健機関(WHO)は「北朝鮮はまだワクチン接種を開始していない2カ国のうちの1つであり、すでに感染が拡大していることから、北朝鮮の医療システムが崩壊していることを示している」と指摘している。
北朝鮮当局は事態を打開するため、各地に駐屯している軍隊や警察部隊に警戒を強化し、道(県に相当)から道、また道内でも人の移動を完全に禁止するよう命令した。しかし、それと同時に各地域への物資の搬入もストップしており、市場には食料品など物資がほとんど入荷しないため、市民は極端な食糧不足に陥っているという。
咸鏡北道の情報筋は「市民はすでに餓死寸前で、新型コロナウイルスによる被害よりも、食糧不足による餓死の心配の方が深刻だ」などと語っている。