さて、ランキングの変遷を黒い気持ちで楽しむには、どうすればいいのか。次の3つの方法をお試しください。
その1「どんな人気企業でも、その運命ははかないことを再認識する」
その2「長く人気を維持している企業の製品を利用して偉くなった気分になる」
その3「あそこも出世したなあと思って自分が育てたような錯覚を覚える」
まずは、その1の解説。約40年前の「1980年版」の文系総合トップ10のうち、最新の「2023年版」の文系総合トップ10に残っている企業は、東京海上日動火災保険(東京海上火災)と日本生命保険だけ。理系総合も、ソニーグループと富士通だけです(広い意味では2023年のNTTデータと1980年の日本電信電話公社も直系ですが)。
学生の憧れだった企業が、たとえば理系総合2位だった東京芝浦電気や6位だった日産自動車のように、波乱の道のりを歩んだ例は多々あります。1981年卒の学生は、ほとんどが定年を迎えました。親類縁者や近所から「すごい会社に入ったね」ともてはやされた若者は、はたしてどんな会社員人生を送ったのか。いや、大きなお世話ですけど。
その2は、ちょっと前向きな活用法。もし東京海上や日本生命(1980年文系総合の9位と10位)の保険に入っていたら、「自分の見る目は確かだった」と満足感を覚えましょう。ソニー(1980年理系7位)の製品を使ったりサントリー(2023年理系総合6位)のお酒を飲んだりするときも、同じ快感を味わえます。
前向きというより、虎の威を借るキツネ的なセコイ了見という気がしなくもありません。黒い気持ちを発動しないとできない芸当ではあります。そんな複雑な感情を飲み込みつつ強引に自分の選択を肯定することで、大人のほろ苦さというスパイスも加わるでしょう。
その3も、要は他人の努力にただ乗りしているだけです。2023年の文系総合3位に輝いたニトリ(理系も14位)や、理系総合7位に食い込んだSky(文系も16位)に対して、黒い気持ちを心の中で充満させつつ、ランキングを見て「いやあ、よくぞここまで」とねぎらいの言葉をかければ、創業メンバーの友だちのような気になれるかも。ニトリはさておき、Skyが何をする会社かまったく知らなくても問題ありません。
そのほか、コロナ前とコロナ後を見比べて何か意味らしきものを見出したり、かつての人気企業の関係者は「過去の栄光」にひたったり、人気の大企業様に仕事でイジめられた覚えがある人は「ざまあみろ」と溜飲を下げたりなど、さまざまな活用法があります。ただし、なんせ黒い楽しみ方なので、人格を疑われる可能性が高いかも。誰にも言わずにこっそり実行してください。