ネットでは決して見られない映像を
また、新番組を手がけるに際して、「芸能人の人気より企画で勝負しなければ見てもらいづらくなっている」「『オモウマイ店』などの地道に足を使った企画が視聴者の支持を得ている」「YouTubeなどのネット動画では見られない映像にしなければ厳しい」「これまでより予算を抑えられる企画が求められている」などの背景もあり、これらを踏まえて企画を立てると、結果的にテレビ東京やキー局以外の番組に近くなってくるのでしょう。
このような背景によって、「ディレクターが過酷なロケに挑む」「専門家、研究者、職人、マニアの知識や技術にフィーチャーする」「『出川哲朗の充電させてもらえませんか?』(テレビ東京系)のように芸能人が足を使う」という主に3つの企画がテレビ番組全般に増えていて、なかでも最も目立つのが日本テレビなのです。
これまで日本テレビは、「民放他局よりバラエティの編集が緻密で笑いの手数が多く、だから視聴率が下がりにくい」などと評価されてきました。しかし、視聴者がその編集手法に慣れ、さらにネットコンテンツなどのライバルが増えたことで争いがシビアになり、予算面の見直しなども加味されたことで、「足を使う」という地道な戦略が選ばれているのではないでしょうか。
テレビには約70年もの歴史があり、なかでも日本テレビは民放初の放送局。長寿番組が多いだけでなく、局内にさまざまな映像制作のノウハウが蓄積されています。テレビでしか見られない、YouTubeなどのネットコンテンツでは見られない番組をどう手がけていくのか。足を使った地道なスタンスは、番組制作の原点とも言えるものだけに、視聴者にとって歓迎すべき傾向に見えるのです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。