窒素などを使い、空気の容量を減らさずに酸素を減らすことができるため酸化を抑制し、商品の鮮度を保つ
食品ジャーナリストの郡司和夫さんが続ける。
「細菌の発酵によって生成されるポリリジンという保存料は、腐敗を防止する効果が非常に高いです。熱にも強いため、サラダや弁当などによく使われています。また、食品のpHを中性に保つことで保存効果を高める『pH調整剤』が使われることもある。それらは特定の物質を指すのではなく、グリシンやクエン酸、リン酸など複数の添加物で作られており、あらゆる菌の増殖を防ぎます」
しかし現在、食品添加物で食品期限を延ばすことは、減ってきている。消費者問題研究所代表で、食品問題に詳しい垣田達哉さんが言う。
「保存料以外の技術が進歩しているからです。例えば、高温になれば商品は腐りやすくなります。そのため、光を遮断するパッケージにすることにより、熱を商品に伝えづらくし、期限を延ばしています」(垣田さん)
食品添加物が減るのは喜ばしいことだ。
また半導体工場並みのクリーンルームにしている食品工場が地域ごとにあり、作ってからすぐに店に着くのも期限が延びた理由だ。その間の輸送も、冷蔵で運んでいるので保存力が高い。そういった物流のよさが、保存料の使用が減っている理由だという。実際、コンビニの弁当は5℃程度の温度で管理される「チルド弁当」が増えている。マヨネーズやカップ麺など、包装を工夫することにより光や酸素の透過を防ぎ、期限延長に成功した商品もある。
さらに、こんな「スゴ技」も確立しつつある。食の安全に詳しいライターの小倉正行さんが言う。
「食品容器内の空気を窒素やアルゴンガス、炭酸ガスなどと入れ替えて充填する『MAP包装(ガス置換包装)』という技術が使われ始めています。食品の酸化を抑制するといわれ、効果を上げています。
欧州では1970年代から用いられている技術ですが、なぜか日本だけ遅れていた。特に肉や魚などの生鮮食品で延長効果が期待できます」