「ある宗教では教義や戒律によって学校の特定の行事に参加できないことなどもあります。校歌を歌えない、運動会の種目の中に参加できないものがある、生徒会の選挙に投票できない……などなど。そうしたことが重なれば、どうしても特別視されてしまいますから、”腫れ物”に触るかのように接せられるようになり、どんどん孤立していきます」
そんな宗教2世の人たちが直面する一番の問題は、「相談する相手がいないこと」だという。
「運良く自分の周りに同じ悩みをもつ宗教2世がいる、というケースは非常にまれです。ほとんどの2世は、自身の悩みを打ち明けられるような、宗教に一定の理解がある友人や大人たちが周囲にいません。だから誰にも相談できず、ひとりで悩みを抱えたまま悶々とした日々を過ごしています」
そんな苦しみから逃げ出すことはできなかったのか。
「宗教2世の中には、子どもの頃から教団や親を通じて受け続けた教義をすんなりと受け入れて信仰心が芽生えて続けている方もたくさんいます。ただ、自分が望まないのに親から信仰を強要されたり、ある時から教義に違和感や不信感を抱くようになったとしても、子どもだったり若いうちはどうしても親に従うという選択をせざるを得ない場合がほとんどです。家出をするにしても、経済的に自立することはとても困難ですので」
大人になってようやく自らの意思で脱会できるようになるまで“逃げ場”のない宗教2世たちの実情。すべての宗教2世がこうした状況に追い込まれているとは限らないが、今回の事件をきっかけに、その実態がクローズアップされそうだ。