蛍光灯がやわらかく照らすコンクリートの床を常連客たちは踏みしめ、皆静かに語らう。夕暮れ時の店内にはじっくり煮込んだおでんのいい香りがふわりと漂う。

馴染み客が必ず頼むのは店の名物、関東煮(かんとだき)

馴染み客が必ず頼むのは店の名物、関東煮(かんとだき)

 夫婦で時々顔を出すという常連客が、熱々の大根やちくわをつまみに酒を傾ける。

「おでんはな、こっちでは関東煮(かんとだき)と呼ぶねんけど、味がよう染みててここのは旨いでぇ。長いこと天満の赤提灯で食べとったやつより断然旨いから、かれこれ20年食べ続けとる」(70代)

「つまみは日替わりでだいたい毎日2種類あんねん。店主の奥さんが作って持ってきてくれるんですよ。今日の推しは、とん平焼きやね」(70代)

 豚肉とキャベツを炒めて、卵で巻いてある大阪名物のひとつ、とん平焼きを旨そうに食べ始めた常連客に、「はいこれなぁ」と絶妙な間合いで店主がそっとソースの瓶を差し出す。

「かれこれ30年通っとるけど、客も店主もみんな似たもん同士やな。誰でも遠慮なく話せるっちゅうわけ。ここでなんでもない会話しながら飲んでいれば、昨日も今日も明日も幸せやねぇ」(80代)

「わしらは“毎日組み”。この店で顔見るのが生存確認の場やね(笑い)」(70代)

「ほんま、ほかに行くとこないし、妻もはよ行っといでぇって言うしなぁ。毎日4時にここへ来るのが日課やねん。常連さんと競馬の話しながらボーっと飲んでるだけやけど、それが1日の締めくくりや。ここ来ないと誰とも話さへんからボケ防止やなぁ」(70代)

味が染みた関東煮には、さっぱり辛口の『焼酎ハイボール』が合う

味が染みた関東煮には、さっぱり辛口の『焼酎ハイボール』が合う

 次から次へとやってくる馴染みの客に店主が、奥の冷蔵庫からひょいと手渡すのは、決まって『焼酎ハイボール』の〈ドライ〉。

「最初の一杯は必ずこの酒。いろんなもん頼んだら親父さん大変やろ? 昔っから親父さんが決めたルールやから、それに従うのみ。味はドライって決まっとる。キリっと辛口がたまらんなぁ」(70代)

2022年6月10日取材

■堀内酒店

【住所】大阪府大阪市北区浪花町4-18
【電話番号】06-6371-3605
【営業時間】16時30分~22時、火曜定休
焼酎ハイボール260円、ビール大びん440円、とん平焼き280円、そらまめ天ぷら250円、おでん80円~
※営業時間等は店舗にお問い合わせください。撮影時はマスク、仕切りを外しています。

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