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亀井静香氏「自主憲法制定は安倍晋三君しかできない。これからの日本に必要だった」

亀井静香氏が安倍氏を悼む(時事通信フォト)

亀井静香氏が安倍氏を悼む(時事通信フォト)

 安倍晋三元首相が凶弾に斃れた。父・晋太郎氏からの付き合いだった自民党の長老・亀井静香氏(85、元金融担当相)が先に逝った後輩を悼む。

 * * *
 安倍晋三君の訃報を聞いて、酷い世の中になったと思った。テロで政治家が殺されることは昔からあったが、宗教団体に入信していた母親のことで恨みを買い、とばっちりを受けた形だ。政治家が宗教団体に呼ばれるのはよくあること。それで深い関係があると思い込んで銃撃されるとは、かける言葉がない。

 印象に残っているのは、私が自民党政調会長だった99年の話だ。当時、党社会部会長だった晋三君は駆け出しで、翌年に始まる介護保険制度について、党内の調整役だった。

 私は「子が親の面倒をみる美風を損なうような制度はよくない」として、「介護サービスを受けない家族に慰労金を出す」という文言を法案に入れるように指示した。

 法案を出すには党社会部会の了承を得る必要があったが、厚生省(当時)の役人は私が指示した文言が入った法案をひっくり返そうとして、部会は揉めに揉めた。

 晋三君は血相を変えて政調会長室に飛び込んできて、「社会部会が紛糾していて、政調会長が説明してくれないと収まりません」と泣き言を言ったんだ。私が部会に行って場を収めてすぐ部屋に戻ると、5分もしないうちにまたやって来た。

「会長に出て行かれたら、了承できないと言っています」と言うから、私は「馬鹿野郎、お前は社会部会長だろう。その後を収められずにどうするんだ」と怒鳴りつけた。当時は私に怒鳴りつけられた思い出しかないだろう。

 政治家一家に生まれた晋三君は“門前の小僧”として政治の基本的なことは心得ていたが、人間がいいんだ。先輩を立てたりすることが自然にできるナイスガイだった。

 日本をアメリカのポチにも、中国のポチにも、ロシアのポチにもしないというのが彼の信念。私は自主憲法の制定を期待したが、それを成す前に殺されてしまった。

 人望があって、国家観・歴史観がしっかりしている男は、安倍晋三をおいてほかに誰がいるのか。強いて言えば、武田良太や城内実だが、闘うにはまだまだヒヨッコだ。

 自分の国の憲法を作ることができる益荒男(ますらお)は彼しかおらず、安倍晋三は、これからの日本にこそ必要だった。

※週刊ポスト2022年7月29日号

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