国内

北海道のヒグマOSO18に立ち向かうハンターの苦悩「クマがかわいそう」抗議も

今年79歳になる猟友会の後藤勲氏(写真提供/北海道猟友会標茶支部)

今年79歳になる猟友会の後藤勲氏(写真提供/北海道猟友会標茶支部)

 先住民族・アイヌが「カムイ(神)」と崇めたヒグマが、北の大地で暴威を振るっている。この3年間で襲われた牧牛は60頭以上。最凶グマが人をあざ笑うかのように立ち回る一方で、ハンターらにも知られざる苦悩が──。【前後編の後編。前編から読む】

 * * *
 現代も続くヒグマ駆除だが、北海道開拓の歴史はヒグマとの戦いだった。

 1915(大正4)年12月、北海道苫前村三毛別(現・苫前町三渓)で死者7人を出す史上最悪の熊害(ゆうがい)事件が起きた。開拓集落に体の大きさ2.7m、体重340kgのヒグマが現われ、数度にわたって民家を襲撃。7人がクマに殺された事件だ。最初の犠牲者の通夜にヒグマが乱入して遺体を荒らしたほか、民家で妊婦を襲い胎児を引きずり出すなど、クマの行状は凄惨を極めた。

 一方、日高山脈のカムイエクウチカウシ山で発生した「福岡大学ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件」(1970年7月)では、登山中の大学生5人のパーティーがメスのヒグマに襲われ、うち3人が死亡。人間の食料の味を覚えたクマが、登山者のリュックを狙ったことで起きた悲劇とされる。

 道内では、統計の残る1962年以降、ヒグマによる人身事故が毎年発生し、昨年までの死傷者は163人を数える。

 現在でも、春先に山菜採りで山に入った人がヒグマに襲われるケースが後を絶たないが、最近は市街地でも油断できない。

 2021年6月早朝、札幌市東区の住宅街に体長1.6mほどのオスのクマが出没。街を徘徊し、住民に大ケガを負わせる事件が起きた。その後、クマは陸上自衛隊丘珠駐屯地の正門から内部に侵入。40代の男性隊員が脇腹を噛まれるなどした。

 現在まで、OSO18によると見られる人への加害は確認されていないが、最悪のケースも想定しなければならない。ハンター歴60年を誇る、北海道猟友会標茶(しべちゃ)支部長の後藤勲氏は語る。

「道東でも牧場が次々と開拓され、クマが住む森へ人が進出した。そこで繁殖し放牧されている牛を、クマが狙うようになったというわけです。『そのうち人間のほうが檻に入るようになる』と冗談をいう人もいるほどです」

「クマを殺すな」の抗議

 かつて道内のヒグマは減少を続け、1990年には5200頭を数えるほどだった。ところが、同年に春グマ駆除が廃止されてから増殖し、2020年度は1万1700頭ほどになっている。

 今後、OSO18のような賢い個体が子孫を残せば、罠にかからない方法を学習し、食料を得るために人里に現われるヒグマが増える可能性も十分にある。クマが人を恐れなくなれば、偶発的な事故も起こり得るだろう。

 惨事を防ぐためにも猟友会は大きな役割を担っているが、ハンター側には様々な制約がある。猟友会厚岸(あつけし)支部の根布谷昌男事務局長はこう語る。

「まず弾が入手困難。主に銅製の銃弾を使うが、多くはアメリカからの輸入品。工場がコロナの影響で止まったほか、銃規制がかかるのを見越して買い占めが起きているらしく、日本への供給が滞っている。値段も従来の2倍です。銃弾が入手できなければ自治体から要請を受けてもヒグマやエゾシカの駆除ができなくなってしまう」

関連記事

トピックス

足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
山下智久と赤西仁。赤西は昨年末、離婚も公表した
山下智久が赤西仁らに続いてCM出演へ 元ジャニーズの連続起用に「一括りにされているみたい」とモヤモヤ、過去には“絶交”事件も 
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
大谷翔平の伝記絵本から水谷一平氏が消えた(写真/Aflo)
《大谷翔平の伝記絵本》水原一平容疑者の姿が消失、出版社は「協議のうえ修正」 大谷はトラブル再発防止のため“側近再編”を検討中
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン