しかもその驚愕の真相や背景には、フツウに安住し、どんなニュースもただ消費するだけの、社会全般への痛烈な問いが見え隠れし、
「答えは出なくても、その問題をせめて知ることは、できたんじゃないかなって。実は表題を道標と読ませたのも道路標識への違和感からで、免許のない私にも標識の意味は漠然とわかる。でも誰もがわかるとされていること自体、暴力的で、世間的な規範の埒外にいる人を排除する点で象徴的だったのと、この人についていけば大丈夫と思える道標の安心感とを兼ねました」
その安心感が功罪どちらにも転じる危うさを私達もまた生き、まずは知ることからと、思わずにいられない。何しろその規範自体が今は過渡期にあるのだから。
【プロフィール】
芦沢央(あしざわ・よう)/1984年東京都生まれ。千葉大学文学部史学科卒。高校時代に創作や投稿を開始し、出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。『悪いものが、来ませんように』『許されようとは思いません』『貘の耳たぶ』『火のないところに煙は』『カインは言わなかった』『汚れた手をそこで拭かない』『神の悪手』など話題作に事欠かず、直木賞や本屋大賞等でもノミネートが相次ぐ、今年デビュー10周年目の実力派。156cm、A型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2022年9月9日号