逮捕前の角川氏の発言を受けて苦言を呈していた見城氏(時事通信フォト)
しかも、KADOKAWAは最上位市場の東証プライム上場企業です。説明のつかないお金を出したことで立件されたなら、当然、株主に対してトップがきちんと説明責任を果たしたうえで、責任を取らなければならないと思います」
五輪問題を追及してきた作家の本間龍氏も続く。
「KADOKAWAは1945年創業の老舗出版社であり、信頼性のあるメディアとしての地位を確立してきた。今回の事件はその地位や看板を傷つけてしまったと思います。それなのにKADOKAWAは、読者に対しても、著者に対しても詫びるのが遅かった。私はKADOKAWAから『ブラックボランティア』(2018年・角川新書)という本を出して五輪の闇を追及しましたが、上層部は私の本を読んでくれなかったのでしょうか。KADOKAWAは質の高い学術書や文芸書も出している。そうした本をつくってきた社員たちも裏切られた気分だと思います」
初期対応としてあまりに稚拙
企業のリスクマネジメントに詳しい危機管理コンサルタントの白井邦芳氏(一般財団法人リスクマネジメント協会顧問)はこう指摘する。
「角川会長の全面否定の発言は、自身が関わっていたか否かは別として、上場企業のトップの初期対応としてあまりに稚拙だったと言わざるを得ない。もし私がKADOKAWAのリスクマネジメントを担当していたら、絶対にこんなコメントはさせません。通常であれば『本件は捜査中につき、回答は控えます』というようなことしか言えないはずなのに、なぜあんなふうに言い切ってしまったのか。世間の人からしたら、創業家出身でワンマンと見られている会長の発言は、単なる個人の発言ではなく、会社全体の総意と見られてしまいます。
捜査の経過を見ていると、検察の標的ははじめから角川会長であった可能性が高い。会長もそのことを分かっていたからこそ、記者たちの前で『僕は全然知らない』などと弁明したのではないでしょうか。あれはメディアや国民に向けてのメッセージではなく、検察側に“待った”をかけたかったのかもしれません。しかしそのことが、いっそう“会社よりも我が身の方がかわいい”ということで、上場企業のトップとしてはあるまじき行為に映ってしまっています」