松重豊はすっかりおなじみ
10年間にわたるイメージ戦略
もともとテレビ業界におけるグルメは、常にトップクラスのキラーコンテンツ。キー局も地方局も漏れなくグルメ番組を制作・放送していますが、裏を返せば「各局がたくさん扱っている」だけで、テレビ東京ほど「グルメならウチ」と打ち出す局はありませんでした。「番組表の中にグルメ番組をバランスよく入れる」「番組の中でグルメ企画の割合を増やす」ことはあっても、グルメを前面に押し出して視聴者にイメージ付けすることはほとんどなかったのです。
テレビ東京も当初は民放他局と同じスタンスでしたが、変わったのはこの10年程度と言ってもいいでしょう。実際、前述したテレビ東京のグルメ番組は、そのほとんどがこの10年間で生まれたものばかりであり、令和に入ってから新番組制作のペースが明らかに上がっています。
奇しくも『孤独のグルメ』がスタートしたのは10年前の2012年。その成功を受けたテレビ東京は深夜帯に『ワカコ酒』『侠飯~おとこめし~』『忘却のサチコ』『新米姉妹のふたりごはん』『絶メシロード』『女子グルメバーガー部』『ひねくれ女のボッチ飯』『先生のおとりよせ』『しろめし修行僧』『ザ・タクシー飯店』などのグルメドラマを量産して視聴者にイメージ付けする戦略を進めました。
さらに、「深夜帯を固めたあとに、ゴールデンや昼のグルメ番組を充実させていく」という逆算的な進め方はテレビ東京ならではであり、約10年もの時間をかけてじっくり進める戦略も他局には難しいことではないでしょうか。
キャンペーン名の「食べ東」は、それなりの自信と覚悟がなければつけられないフレーズだけに、今年のシルバーウィークはもちろん、今後もグルメで私たちを楽しませてくれるでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。
「食べ東」キャンペーンのHP
『ワカコ酒』(公式HPより)