ライフ

間違いだらけの虫歯治療“レジンを使わずに銀歯にこだわる”のは時代遅れ

虫歯治療の注意点は?(イメージ)

虫歯治療の注意点は?(イメージ)

 正しい歯科治療・口腔ケアを学ぶことが重要なのは、歯科業界の一部に“間違った治療・ケア”が蔓延しているからでもある。どんな落とし穴があるのか、『やってはいけない歯科治療』著者のジャーナリスト・岩澤倫彦氏が虫歯治療の「間違った認識」をレポートする。

 * * *

【間違い】虫歯治療の基本は、やっぱり銀歯?

 歯周病と並んで歯を失う原因となるのが虫歯だ。もし歯科医から“銀歯”の治療を勧められたら、こう問いかけてほしい。

「コンポジット・レジン(以下、レジン)で治療してもらうことは可能ですか?」

 限局的な虫歯なら、大抵はレジンで治療できると言われている。銀歯の治療は、たとえ虫歯が小さくても周囲の健全な部分まで大きく削る必要がある。銀歯には一定の大きさが必要であること、そして銀歯と歯の境目に虫歯ができないよう「予防拡大」として健全な歯も削るのだ。

 昭和の時代なら銀歯は正解だったかもしれないが、世界の虫歯治療は「MI=ミニマルインターベンション」という概念に変わった。

 直訳すると“最小限の侵襲”。予防拡大で健全な歯を大きく削ると、歯の寿命を短くしてしまう反省から、削る範囲は必要最小限に留めるという考え方だ。MIを可能にしたのが、日本発の歯科材料といわれるレジンだ。

【間違い】レジンで治療しても、すぐダメになる?

 日本の歯科医は、レジン治療に対する評価が低い傾向がある。

「材料としての強度がなくて、長持ちしない」として白い材料を希望する患者には、ジルコニアやセラミックを勧める。

 これに関して、レジン治療の第一人者である、東京医科歯科大学・名誉教授の田上順次氏(現・クオーツデンタルクリニック院長)に聞いた。

「レジンの強度は天然歯とほぼ同じです。ジルコニアやセラミックは天然歯より硬いので、噛み合わせの歯が壊れたり、歯根が割れる要因になります。もし壊れても、レジンなら簡単に修復することが可能です」

 プラスチック系素材のレジンは、ペースト状になっている。虫歯部分に接着剤を塗布後、レジンを充填して光を当てると、天然歯と同等の硬さになるのだ。

「レジンの耐久性は銀歯と同等だと証明されていますが、強度がないという歯科医がいます。それには原因があって、光をしっかり当てていないとか、接着の基本ができていないなど、技術的な問題があるのです」

【間違い】塗るだけで虫歯が治る治療法がある?

“虫歯の穴に詰めて虫歯菌を死滅させ、歯の石灰化を促す。治療時間は10分。気づかないうちに虫歯が治っている”──これが「ドックベストセメント」という虫歯治療だという。歯を削らず、治療中の痛みもなく、成功率は90%以上、とドックベストセメントの普及活動をしている歯科医は主張する。

 だが、実際に治療を受けた患者からトラブルの相談が非常に多い、と前出の田上氏は述べた。

「そのセメントに殺菌作用があるために、虫歯を取らずに、それを塗っておくだけにして、基本的な治療をしていない例が見られます。

 結局、虫歯が進行してしまい、他のクリニックを受診した時には手遅れで抜歯するしかない、というケースがいくつも起きています」

 自費診療として行われているが、未承認の治療法で、科学的な有効性は証明されていない。

関連記事

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン