音響効果を担当した柴崎憲治氏に話を聞く(C)2019こうの史代・コアミックス/「この世界の片隅に」製作委員会
――音そのものだけでなく、「効果音の構成」もあるんですね。
柴崎:押したり引いたりがうまいんです。バババッと銃弾の音がしたと思ったら、今度は水の中に入って静かになる。その後顔が自ら出るとまたワアーっと来る。そういうメリハリが上手いんですよ。
――それは監督だけではなく、そういった効果音の人たちの創意工夫によるものなんですね。
柴崎:やっぱり、そこはサウンドデザイナーですよね、監督一人の発想では、ああはいかないです。
――お話をうかがっていて、音響効果もまた演出的な仕事なのだと知ることができました。
柴崎:音屋としての演出家ですかね。僕自身は職人だと思っているんですよ。一人で、自分のやるべきことに全力を尽くす。ものを作る人間は、みんなそうだと思っています。職人であることに、僕らの誇りがあるような気がするんです。
僕は「映画という娯楽をつくっている職人だ」と、ずっと思ってやってきました。
【プロフィール】
柴崎憲治(しばさき・けんじ)/1955年生まれ、埼玉県出身。アルカブース代表取締役。音響効果の重要性を映画界に認知させた立役者の一人。「日本一多忙な音効マン」の異名も。今年公開の担当作に『大怪獣のあとしまつ』『死刑にいたる病』『峠 最後のサムライ』など。
【聞き手・文】
春日太一(かすが・たいち)/1977年生まれ、東京都出身。映画史・時代劇研究家。
※週刊ポスト2022年9月30日号