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旧統一教会からの脱会支援者「我々の仕事の9割5分は、家族に説得を諦めさせないこと」

旧統一教会との関係を断つまで様々な苦労があったという(写真/共同通信社)

家族を保護・脱会させるための困難とは(写真/共同通信社)

 安倍元首相を銃撃した山上徹也容疑者の母親が旧統一教会に約1億円の献金をしたように、同教会の信者が行なう高額献金は、その家族に甚大な被害を及ぼす。愛する家族を保護・脱会させるための困難は、心身の疲労も時間的な負担も大きい。

 信者の脱会の説得に当たっては、旧統一教会の教義を理解する牧師が同席するケースがほとんどだという。脱会を支援する日本基督教団白河教会の竹迫之牧師は、「牧師にできることは最後のほんの一押しだけ」と話す。

「信者は『牧師はサタン』と教えられているから、まず牧師の話に耳を傾けません。だからまず家族が統一教会の教義を理解して、『ここはどうなの』と本人と会話を繰り返すことになる。本人に教義について説明させ続ければ『あれ、おかしい』と自覚を持ち始める。その違和感が脱会のために決定的に必要なんです。

 実際に私が支援したある親は、統一教会の催しに7年かけて通い、教義を理解して子の脱会の足がかりにしました」

 当事者の心の動きに深い思いを寄せるのは、竹迫牧師が旧統一教会の元信者であるからだ。

 1980年代半ばの浪人生時代、路上勧誘をきっかけに入会した竹迫牧師は徐々に教えにのめり込み、様々な教団活動に従事した。しかし脱会させようとした両親の説得に対し、応じたように見せかける「偽装脱会」を試みた時、誤解した信者から「裏切り者」とみなされた。

「教会に向かう途中で信者数人に囲まれ、『裏切り者はもう来るな』と腹を3発蹴られました。仲間と思っていた人に暴行されたショックで、そこで初めて統一教会の教えに迷いが生じたんです。

 私の場合、正直牧師になった直後も、統一教会の原理が間違っていると断定はできなかった。しかし相談に来る家族の深刻な姿を目の当たりにして、『統一教会は危ない。抜けたほうがいい』と脱会を支援するようになった」(竹迫牧師)

「統一教会対策神戸集会」代表の尾島敦義氏も、「脱会には時間的負担という代償に耐えうる愛に頼るしかない」と話す。

「統一教会は『自分の頭で考えてはいけない』『サタン側の人間の声を聞いてはいけない』と信者に叩き込みますが、それを乗り越え他人の話を聞く姿勢をもたらすのは家族の長期にわたる献身と愛しかない。我々の仕事の9割5分は、家族に説得を諦めさせないことです」

※週刊ポスト2022年10月21日号

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