大阪本社が入る中之島フェスティバルタワー(写真/共同通信社)
一見すると、社として速やかに誤りを正したかのように見えるが、“現場の考え”は異なる。元朝日新聞記者で「吉田調書」報道のデスクを担当した鮫島浩氏が言う。
「『撤退』や『命令違反』は配慮を欠く表現だったという指摘は理解できます。しかし記事内容はあくまでも事実で、記事全体を取り消して記者を処分したのは過剰でした。当時の木村社長が過去の慰安婦記事や池上コラム掲載拒否で自らに向けられたバッシングに耐え切れず、『吉田調書』に全責任を転嫁して逃げ切ろうとした。社内には萎縮ムードが広がり、気骨ある記者は一掃された」
朝日OBでフリー記者の烏賀陽弘道氏も言う。
「現役社員らに聞くと、今の編集幹部はSNSなどネットの炎上や抗議を過度に恐れ、少しでも物議を醸しそうな記事は『社内検閲担当』の役職者が事前に潰すか、無難な内容に修正しているそうです。2003年の退社後に書いた拙著『「朝日」ともあろうものが。』では朝日の腐敗や怠業ぶりを指摘しました。しかし、彼らは耳を傾けなかった。現在の朝日の衰退ぶりには無力感しかありません」
(後編に続く)
※週刊ポスト2022年11月11日号