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スマホで検索禁止! 萩・石見空港に降り立って「地元の人の口コミ」だけで1泊4食グルメ旅してみたら美味しすぎた

脂たっぷり! のどぐろ炙り丼

脂たっぷり! のどぐろ炙り丼

『はまだお魚市場』で見せてもらった巨大クエ

『はまだお魚市場』で見せてもらった巨大クエ

 上の写真、見てください。脂がのった「ノドグロ」が香ばしく炙りにされ、これでもかと丼に……。さらに、ぴかぴかに光る、ドーンと大きな「クエ」。こちらは島根県で出会ったお魚たちです。

 島根県のグルメな魅力を探る“オイシイ取材”の企画だと聞いて、初めは喜んだものの、編集担当からこんなルールを課されてしまいました。

「旅行中、スマホで調べるの禁止ね。現地で聞き込みして、地元の人がおすすめしてくれるおいしいお店を見つけてきてください。ひとつヒントをあげるなら、空港近くで大きな街といえば益田、浜田、江津ですよ」

 旅といえば偶然の出会いも魅力とはいえ、いまどきはスマホでお店をばっちり調べてから行くのが普通。それを封印されるとは、なんという無茶ぶり──。しかし結論から言うと、とってもおいしいものをたくさん食べることができました! 地元の方々もみんな優しくて、おすすめのお店をいっぱい教えてくれました。 1泊2日の”聞き込みグルメツアー”で出会った食べものをぜひ自慢させてくださいっ!

益田のソウルフード「うどん」の魔力

 10月のある日の午前9時45分、島根県の西側に位置する萩・石見空港に記者は降り立ちました。羽田空港から約90分で到着したので、「島根ってこんなに気軽に来られるものなんだ」と少しびっくり。萩・石見空港 は1日2便と小さい空港ですが、往路は朝の便、帰りは夜の便だから1泊でもたっぷり楽しめそう。まずはレンタカーを借りに行きます。現在、萩・石見空港(羽田線)往復利用者特典としてレンタカーの割引キャンペーンを実施中。2名以上の利用&島根県内の宿泊施設に1泊以上で、なんとレンタカー(2日間)を2,000円で借りることができる。さぁ、旅の始まりだ!

萩・石見空港の外観

萩・石見空港の外観

 そういえば編集担当が「空港近くで大きな街といえば益田、浜田、江津」と言っていた。萩・石見空港から車を10分ほど走らせて、まずは益田駅前へ。個性あふれるお店が100軒以上も立ち並び、つい目移りしてしまいます。散策していると、地元名物のお饅頭屋さんが目に留まりました。鶏卵饅頭……なんだかおいしそうな響き……。吸い寄せられるように和菓子店「鶏卵堂」に入っていきました。

「いらっしゃい! ちょうどお饅頭が焼きたてですよ」

焼きたての鶏卵饅頭

ころんとしたフォルムの鶏卵饅頭。見た目もかわいい

 鶏卵饅頭は、1955年の創業時から変わらない製法で焼き上げたカステラ生地と、甘さ控えめの白餡が特徴。「50年前に食べたお饅頭の味が忘れられない」という企画で、人気バラエティ番組『探偵!ナイトスクープ』に取り上げられたこともあるそうです。焼きたての鶏卵饅頭をひとついただくと、ほっと安心するような素朴な味わい。せっかくなので、優しい店員さんに益田グルメについて聞いてみました。

記者「益田でおいしいお店といったら、どこでしょうか?」

店員さん「すぐそばの『うどんの萬栄』は、地元のみんな食べていますよ。自家製麺で、具もいろいろあっておいしいのよね」

 さっそくグルメ情報をゲット! お土産に鶏卵饅頭を買って、『うどんの萬栄』に移動しました。こちらのお店は1976年創業。現在は、初代社長のもとで修行した広瀬拓朗さんと、その妻・さとみさんの夫婦ふたりで切り盛りしているそうです。「鶏卵饅頭のお店で、こちらがおいしいって聞いて……」とご挨拶すると、さとみさんは「あら! じゃあ私もお客さんに鶏卵饅頭おすすめしよっと!」とニッコリ。飛び込み取材だったにもかかわらず優しく迎えてくださって、きっとこのご夫婦の人柄も「うどんの萬栄」の魅力なのでしょう。開店すぐに子ども連れから老夫婦までやってきて、地元の老若男女に愛されるお店であることがわかります。

益田市『うどんの萬栄』の特製うどんとおむすび

益田市『うどんの萬栄』の特製うどんとおむすび

 特製うどんは、牛肉に生卵、油揚げ、ネギ、ナルトが乗せられており、ちょっと珍しい具の取り合わせ。専用製麺機による平打ちねじれ麺につゆがよく絡みます。食べすぎか……と一瞬躊躇したものの、やっぱりおむすびも注文して正解! 甘辛い出汁は、うどんはもちろん、白米との相性もぴったり。卓上に用意された天かすを丼に投入して、出汁をしみしみにして食べるのもよし。ある程度食べ進めたところで生卵を崩して味変するのもよし。家庭的な味わいでも、ふとしたときに「萬栄のうどん食べたいな〜」と思わせるような不思議な魔力があります。東京に戻ってから調べると、”益田うどん”として地元で独特のうどん文化が形成されており、このお店がその代表格なのだそうです。

専用製麺機で平打ちねじれ麺をつくる広瀬さん

専用製麺機で平打ちねじれ麺をつくる広瀬さん

江津で出会った「宝石のようなお寿司たち」

 お腹がいっぱいになったので、そろそろ次の町・江津へ行きましょう。江津は日本三大瓦のひとつ、石州瓦の産地として有名で、赤い瓦屋根が並ぶ昔ながらの街並みが楽しめます。特に江津駅から車で5分ほどのところにある「天領江津本町甍街道」は、大正ロマンのムードが漂い、カメラのシャッターを押す手が止まりません。さらに江津は、日本神話を題材にした石見神楽でも知られ、定期公演が行われているそう。1350年以上の歴史を持つという有福温泉も気になる〜!

……スマホ禁止旅なのに江津にこんなに詳しいのは、駅前の観光情報センターに行ったから。何も知らないまま来た人間相手に親切に街の案内をしてくれました。そうだ、ここでお店の聞き込みもさせてもらおう!

駅前の観光情報センター

駅前の観光情報センター

記者「あの〜、江津でおすすめのお店ってありますか?」

観光情報センターのスタッフさん「最近の江津は、ニューヨーク帰りのデザイナーさんが工房を作ったりして、若い人たちが新しいことをしようと頑張る街でもあります。今年6月にオープンしたばかりの『かわさきや』というお寿司屋さんは、江津出身の若い板前さんのお店です。店構えもすごくオシャレなんですよ」

 ということで晩御飯は「かわさきや」でいただくことに。お店のオープンまで少し時間があったので、海沿いをドライブしてみたところ、見事な夕焼けを見ることができました。島根の青い海を「山陰ブルー」と呼ぶんですって。こんなに素敵な景色を毎日楽しめるなんて、島根の人がうらやましくなっちゃいます。

「山陰ブルー」と称される見事な絶景

「山陰ブルー」と称される見事な絶景

波子海岸の夕焼けが綺麗!

波子海岸の夕焼けが綺麗!

 そうこうするうちに時間もちょうどいい頃合いになったので、「かわさきや」さんへ。確かにすごくオシャレな店構え! 店主の有馬裕貴さんは広島で板前修行をして、今年6月に満を辞して地元・江津にお店をオープン。お店のデザインを手掛けたのは小中高と同級生だった江津出身のデザイナーだそうで、「若い人が新しいことをしようと頑張る街・江津」を象徴するようなお店です。

江津市『かわさきや』の外観

江津市『かわさきや』の外観

『かわさきや』の絶品お刺身とお寿司

『かわさきや』の絶品お刺身とお寿司

「かわさきや」のお寿司は、地元で獲れた新鮮な魚を使っているのに加え、酒粕を醸造させた“赤酢“を使ったシャリも魅力。一般的な白酢に比べてまろやかな風味が特徴で、ネタの旨味を柔らかにまとめ上げてくれる。「かわさきや」では日本酒も豊富に取り揃えているため、地元の魚×地元の日本酒のペアリングで至福のひとときが過ごせること間違いなし。

 ケンサキイカに中トロ、エンガワ、コハダ、ホタテ、エビ、ウニ……。新鮮なネタがぴかぴか光り、まるで宝石のようなお寿司たち。これだけ素敵なお店なのに、上にぎり(七貫)1,500円、特上にぎり(七貫)2,000円とリーズナブル。さすが漁港のそばの街は、お魚の値段が東京とは全然違います。「この価格帯なら、安心して好きなだけ飲み食いできる!」ということで、島根旅行の夜は楽しく更けていくのでした。

お寿司を握る有馬裕貴さん

お寿司を握る有馬裕貴さん

吉兆出身の主人の心遣いが光るホテル朝食

 さすがに鬼の編集担当も「ホテルも飛び込みで決めてね」とまでは言いませんでした。浜田駅から徒歩2分という好立地に惹かれて予約した「ホテル松尾」ですが、レストランのお料理にも力を入れているとのことで、館内には食欲をそそるメニューの写真が貼られています。それもそのはず、なんと代表取締役社長の松尾明さんは日本を代表する高級料亭「吉兆」の出身だそう。松尾社長は調理場でも采配を振るっていると聞いて、朝食への期待が高まります。

浜田駅すぐそばの『ホテル松尾』の豪華朝食

浜田駅すぐそばの『ホテル松尾』の豪華朝食

 こちらが地元食材を使った「ホテル松尾」自慢の朝食。スマホ禁止の旅といえど、島根はのどぐろが有名なことくらいは知っています。名産が食べられてうれしい〜。しかし、この赤いすり身は一体……?

松尾社長「これは浜田名物の”赤天”です。魚のすり身に赤とうがらしを練り込んだものですよ。赤天を作るメーカーはいくつかあるけど、うちではずっと江木蒲鉾店のものを提供しています。そこの社長と腐れ縁だからさ(笑)」

 ピリ辛風味はもちろん、シャリっと軽い食感の衣もおいしい。居酒屋メニューとしても定番らしく、たしかにマヨネーズを添えてビールをグッといきたくなる味です。島根の新米と板わかめの組み合わせもぴったりで、おひつ一杯のご飯もぺろり! 朝からしっかり食べてパワーチャージできました。

 女将の恵美さんは気さくな人柄で、島根の観光情報をいろいろ教えてくれます。

『ホテル松尾』の皆さん

『ホテル松尾』の皆さん

恵美さん「浜田で観光するなら、去年リニューアルしたばかりの『はまだお魚市場』がいいと思いますよ。お魚を安く買えるだけじゃなくて、フードコートもあるんです」

記者「フードコートでおすすめのお店はありますか?」

恵美さん「『めし処 ぐっさん』の海鮮丼は、新鮮なお魚を贅沢に使っていておいしいですよ。のどぐろ炙り丼とか……。浜田漁港で獲れる穴子は大ぶりなので、そちらもぜひ食べてみてください」

 のどぐろ炙り丼! 大ぶりの穴子! 朝ご飯を食べたばかりなのに、想像しただけでヨダレが出そう。さっそく「はまだお魚市場」に向かいます。

脂がたっぷり乗ったのどぐろ炙り丼

「はまだお魚市場」に到着し、最初は仲買棟へ。獲れたてのお魚がずらりと並び、活気にあふれています。水槽に泳いでいる大きな魚が気になる……。

『はまだお魚市場』内には魚、魚、魚!

『はまだお魚市場』内には魚、魚、魚!

鮮魚店の店員さん「これはクエ。20キロ超えのクエがいたんだけど、ちょうど昨日売れちゃったんですよね」

筆者「へー。このクエは何キロなんですか?」

鮮魚店の店員さん「これは7キロくらいですね」

 冒頭で紹介したクエの写真がそれ。ということは、20キロ超えのクエは約3倍の大きさということ!?  仲買棟を巡って、「このお魚はどう食べるのがおいしいですか?」なんて店員さんと会話するだけでも楽しいですが、「はまだお魚市場」での一番の目的は海鮮丼です。いざフードコートへ!

『めし処ぐっさん』ののどぐろ炙り丼(右)と穴子丼(左)

『めし処ぐっさん』ののどぐろ炙り丼(右)と穴子丼(左)

 こちらが「めし処 ぐっさん」ののどぐろ炙り丼(1,850円)と穴子丼(1,500円)です。のどぐろも穴子も脂がたっぷり乗った濃厚な味わいで、白米が進んで仕方ありません。のどぐろ炙り丼はカツオの風味が効いた出汁がついてくるので、途中で出汁をかけて食べると二度美味しい。穴子丼は山椒の風味がアクセントになっています。たしかに浜田の穴子は肉厚で、普段東京で食べている穴子よりもなんだかワイルドな食べ心地。こんな穴子もあるのか〜。

 仲買棟、フードコートとめぐり、もちろんお土産コーナーも忘れてはいけません。大きな煮穴子(1,058円)とのどぐろ開干(1,404円)、赤天(736円)、刺身醤油(464円)を買いました。こちらのふじもと醤油の刺身醤油は「めし処 ぐっさん」でも使用されているそうです。

土産の品。左から時計まわりに大きな煮穴子・ふじもと醤油の刺身醤油・のどぐろ開干・赤天

土産の品。左から時計まわりに大きな煮穴子・ふじもと醤油の刺身醤油・のどぐろ開干・赤天

 しっかりお土産も買って、そろそろ島根旅行も終盤です。島根の海ともこれでお別れ。前日はあいにく曇りっぽいお天気だったものの、この日は晴れ空の景色を楽しむことができました。今回はグルメ重視の旅程でしたが、海辺で山陰ブルーをのんびり眺める旅も絶対癒されるだろうなぁ。

 スマホ禁止という無茶ぶりのもと、なんとか無事終わった1泊2日の旅。おいしい食べものに加え、地元の方々の優しさも心に残りました。島根、絶対また行きたい!

※値段はすべて税込み(取材・文/原田イチボ 写真/小倉雄一郎)

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提供:公益社団法人島根県観光連盟

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