店の壁にはOBたちの名刺や、店主夫妻への感謝の言葉が綴られた色紙が所狭しと飾られている。
もちだ酒店は昭和24年創業、初代は滋賀県出身。戦後の混乱期に上京し、この地に酒屋を構えた。
「親父(初代)は頑固者だったから、カミさん(路子さん)は酒屋に嫁いできて長年苦労もかけてきた。角打ちを始めてからは毎日楽しそうでよかったよ。地元の人と現役学生、卒業生の憩いの場ができて嬉しいね」と店主。
早大生たちから「東京の母」と慕われる路子さんも、
「角打ちのおかげで立派に成長した卒業生らに会う機会が増えて幸せですね。早稲田の酒屋に嫁いできてよかったわ」と目尻を下げる。
「娘の子育てが一段落した頃、早慶戦で初めて見た応援団が格好よくって、一瞬で虜になっちゃったのよ。応援団の追っかけ、今でいう“推し活”よ(笑)。
清武くんが所属していた男子チア部『SHOCKERS (ショッカーズ)』も大好きで、今でもずっと応援しているんですよ」(路子さん)
早稲田大学公認同好会「SHOCKERS」は、2004年に発足した日本初の男性チアリーディング部で、浅井リョウの小説のモデルにもなるなど注目を集める存在だ。
店内のテレビに「SHOCKERS」の映像が流れると、現役生も混じって一杯やりながら鑑賞会が始まる。
赤や緑に染めた個性的なヘアスタイルの学生たちがダンスをしたりバク転をしたり、アクロバティックなパフォーマンスが圧巻だ。
和やかな店で客らの絆を深める酒は『焼酎ハイボール』。
昭和39年卒というOBも楽しそうに酒を傾ける。
「男子チア部とはハイカラだね。俺たちの頃は、応援団といえばバンカラで硬派。時代は変われど、応援歌『早稲田の栄光』を歌い続けてきた老いも若きも、我らが“栄光”の仲間たちと交わす酒はいつも爽快な辛口。普遍の味だね」(80代)
2022年10月11日取材。
■もちだ酒店
【住所】東京都新宿区西早稲田3-1-3
【電話番号】03-3202-6513
【営業時間】18時30分~23時(土日祝は18時から)、月曜定休(祝日は不定)
焼酎ハイボール300円、ビール中びん600円、おでん盛り合わせ850円、自家製カツオ漬け650円、豚キムチ750円
※営業時間等は店舗にお問い合わせください。撮影時はマスク、及び仕切りを外しています。