カメラに向かってポーズを取る山田邦子
今大会では男性ブランコに対して、松本人志が96点つけた一方で、山田は86点だった。審査員の間で10点の差があり、この点差はまさに“ブレ”だったといえるかもしれない。
「全審査員に共通する明確な審査基準を設けない限り、このようなブレが生じるのは仕方ないことですが、ブレが大きすぎると審査の公平性が失われる可能性もあります。さまざまなネタのタイプがある以上、すべてを同じ審査基準にすることは難しいので、たとえば審査員をあと2人増やして9人にして、最高点と最低点を省いた7人の点数を合計して総合点を出すなど、ブレをある程度軽減させる方式を採用する必要があるでしょう。山田邦子さんの審査に対してブレがあるように見えたのは、山田さんの問題というよりも、審査方法全体の問題だったと思います」
M-1グランプリは今回で18回目。年々レベルは高くなるとともに、“競技性”が高まっているとも言われている。エンタメ事情に詳しいライターの大塚ナギサ氏はこう話す。
「大会を重ねることで、“M-1でウケやすいネタ”の傾向が出てきて、出場者たちもそれをしっかりと研究して、“M-1仕様”のネタで挑むケースも多い。つまり、M-1を競技として捉えて攻略する出場者もいるんです。たしかに、そういったネタばかりであれば、わかりやすい審査基準を作ることもできるでしょう。しかし、今回決勝戦に進出したメンバーを見ると、かなり個性的なネタを披露するコンビが多く、優勝したウエストランドにしても、必ずしもオーソドックスな“M-1仕様”のネタというわけではありません。言ってみれば、審査には一定の傾向があるものの、決勝戦ではその傾向が通用しないケースが多いんです。そして、毎回大会後に審査に対する賛否両論が出てきてしまう。M-1出場者も大変ですが、審査員こそ本当に大変だと思います」
競技性が高まるとともに、多様化も進んでいるM-1グランプリ。審査員の苦悩は今後も続きそうだ。