上15ミリにおめでたさを凝縮した貝淵さんのラフ
貝淵さんは、PCを使わずに色鉛筆でラフを手書きする。アイデアを出してからラフ案制作までかかる時間は30分程度という。料額の下半分に自治体などの顧客が独自デザインを入れることが可能な商品用に、上半分の15ミリのみにデザインした。年賀はがきをデザインする上で大切にしていることを尋ねた。
「基本的に切手デザインと同様と考えますが、年賀はがきは圧倒的に多くのお客さまの目に触れるものなので、より万人向けであることを意識します」(同前)
料額の意匠「うさぎとこたつ」、「うさぎと青海波文様」をデザインした楠田祐士さんはこう語る。
「『うさぎとこたつ』は年賀はがきが届くお正月、こたつでゆったりと過ごすうさぎを描くと可愛らしいかなと思いデザインしました。こたつにはミカンがつきものですが、今回はうさぎが主役ですので、こたつの上にはニンジンを置きました」(楠田さん)
波の上をうさぎが跳ねながら駆けている「うさぎと青海波文様」は、躍動感があふれるデザインだ。楠田さんが解説する。
「諸説あるようですが、波とうさぎは縁起のよい組み合わせとして昔から使用されてきました。その青海波とうさぎのデザインでお正月のおめでたさを表現しました。また、ささやかなアイデアですが、波の間からニンジンも飛び出しています」(同)
楠田さんがラフ案を作画する時間は1時間ほどだが、「アイデアはたくさん並列して考え、そこからラフに進むまで1日~2日ほど寝かせて検討する時間もあります。年賀はがきについては、誰からも愛されるデザインであること、親近感のわく優しいデザインであることを心掛けています」と語る。
デザインの舞台裏を知った上で年賀状を見ると、新年の慶びがますます増してくるように感じるだろう。
撮影/本誌・五十嵐美弥 取材・文/上田千春