芸人にとってのうわさについて「芸人の間を一周すると、派手な物語になってしまう」と語るニシダ
高橋:芸人さんはそもそも話が上手だから、うわさのクオリティも高そうですね。
ニシダ:それはあるかもしれないです。元のエピソードは大したことなくても、芸人の間を一周すると、派手な物語になってしまう。自分のうわさでも、他人のでも、たまにすごい話が回ってきますね。
高橋:ニシダさん自身も、うわさの種みたいなものをキャッチしたら、誰かに話すときには一筆付け加えたくなるものですか。
ニシダ:そうですね……。たとえば、高橋さんのうわさをどこかの場で聞いて、けっこう盛り上がったとするじゃないですか。次に、別の場所で自分が同じうわさ話をするときに、自分が耳にしたときより盛り上がってないなと思ったら、やっぱり一筆加えたくなっちゃいます。
高橋:でもそれ、ニシダさんのうわさについても同じですよね。自分以外の人たちによって、根も葉もないエピソードが加えられて、〈本当じゃないニシダさん〉が生み出されても気にならないですか?
ニシダ:面白ければ大歓迎です。むしろ、めちゃくちゃ尾ひれがついた面白いエピソードって、最初にあったはずの〈本当の部分〉だけが、いつの間にか消えちゃっていることの方が多いかもしれません。例えば、たまたま面白い動画が撮れた。これはもう芸人の性だと思うんですけど、誰かにその動画を見せるときには、さらに面白く話そうとしますよね。それを何十回と繰り返すと、だんだん唇が勝手に動くようになるんです。
高橋:仕上がっちゃう。
ニシダ:ここがウケたから、これも入れるし、あそこはウケてないから切っちゃおうとか。そうしていると、いつの間にか、元の動画の話がいっさいなくなって、口は〈なかった出来事〉しか話してない。けど、言葉はめちゃくちゃ流暢に出てくる。
高橋:すごい、レベルの高い詐欺師っぽい。
ニシダ:自分で自分を騙す、みたいな。『つけびの村』にも、立て板に水で話す人が出てきましたね。