30才アスリート「卵子凍結」という選択 次期冬季五輪を目指すフィギュア小松原美里選手に密着
採卵針で吸引した卵胞液が、チューブを通って細長い容器に入っていく。卵胞液がたまったら、すぐに隣の培養室へと運ばれる。超音波画像で卵巣を確認しながら、膣から左右の卵巣に長細い採卵針を刺し、卵胞液ごと卵子を吸引する。10~15分で終了し、術後は1時間ほど安静にして、その日のうちに帰宅できる
小松原美里選手とパートナー・小松原尊(ティム・コレト)選手
終始笑顔で前向きな発言が印象的だった小松原選手
6月、小松原選手は練習拠点のカナダ・モントリオールから半年ぶりに帰国。国内で開催されるアイスショーの合間を縫い、『六本木レディースクリニック』へ
採血を行い、卵巣内の卵子の数を推測する血中の「AMH濃度」を測定。甲状腺機能に異常がないかや感染症の有無も検査する
初診時、血液検査の結果から治療計画を立てていく。小松保則院長から「超音波検査で子宮は左右とも問題なし」と説明を受け、小松原選手はホッとした表情を見せる
左右の子宮内を超音波で確認。この日は生理開始数日後で、黒く丸い部分が、卵子が入った卵胞。「大きさのばらつきはありますが、これから卵胞を育てる薬剤で卵巣を刺激して、採取できる大きさまで育てていきましょう」と小松院長
ホルモンを補い卵胞を育てるため、ペンタイプの排卵誘発剤を自分で打つための指導をクリニックで受ける。腹の肉をつまんでゆっくり10秒数えながら注射する。注射回数は人によって異なり、小松原選手の場合は1日1回。痛みはあまりないのだそう
手術前に静脈麻酔をする小松原選手に看護師が話しかけ、緊張をほぐす場面もあった
培養室では、吸引した卵胞液から顕微鏡を使って卵子を探していく。卵胞液の中に卵子が見つからない空胞の場合もある。顕微鏡の画像は手術室のモニターにもリアルタイムで映し出され、採卵中の医師にも情報共有される
手術室に隣接する培養室で。顕微鏡下で成熟した卵子を凍結容器にのせていく
顕微鏡下で卵胞液から卵子(正確には卵子卵丘細胞複合体)を見つけ出し、ピペットで吸引していく
ピペットで吸引したものを別の容器に移し替え、卵子の周りを覆う卵丘細胞を除去して、卵子だけにする。卵子の大きさは0.1〜0.15mm
専用のシートに凍結保護剤と卵子をのせる
専用のシートを液体窒素に直接投入し、急速冷却。固体と液体の中間状態を保っているので、卵子は生きたままの状態をキープ
凍結した卵子はマイナス196℃の液体窒素のタンク内で、半永久的に保存できる
工程を熱心に観察する小松原選手。「卵子凍結に興味を持っている選手が増えていて、よく質問を受けるようになりました。私の体験をしっかり伝えたい」とトップランナーらしい発言を
術後、超音波検査で子宮を確認。当初、10個程度の採卵を想定していたが、凍結数はその半分だったため、今後について小松院長と相談を重ねていく
六本木レディースクリニック院長・小松保則さん。一般不妊治療から高度生殖補助医療まで不妊治療を専門とする。じっくり時間をかけ、わかりやすい説明を行うなど、寄り添った診療スタイルは患者からの信頼が厚い
女性の一生における卵子の数の変化
年齢別AMH値と採卵・凍結数