スポーツ

田中史朗によるラグビーW杯展望「今の日本代表はひとつのきっかけで結束できる。また日本中を熱狂させてくれるはずだ」

田中史朗は今大会をどう見る?(撮影/木村圭司)

田中史朗は今大会をどう見る?(撮影/木村圭司)

 9月8日にラグビーW杯フランス大会が開幕する。2011年・2015年・2019年の3大会を戦い抜いた「小さな巨人」田中史朗(38)。強化試合の解説も務めた田中は今大会の展望をどう描いているのか。

 * * *
 W杯前に行なわれた強化試合の1勝5敗という結果に不安を抱くファンも少なくないと思います。確かに、ぼくの目にも状態がよくないように見えました。でもぼくは、日本の躍進を信じています。日本代表が、一気に変わる可能性を秘めた組織だからです。

 南アフリカを破った2015年W杯も、ベスト8になった2019年W杯もチームがまとまるきっかけがありました。2015年は、最後の強化試合となったジョージア戦で終盤に逆転した瞬間、チームがひとつになった実感をみんなが共有できた。2019年はジェイミー・ジョセフ(ヘッドコーチ)の言葉です。アイルランド戦の前、普段から情熱的な彼がいつも以上に熱っぽく語りました。

「オレたちが勝つとは誰も思っていないだろうけど、台風を巻き起こそう!」

 その言葉が、いままで以上に、みんなが身体を張ったプレーを繰り返すきっかけになり、ワンチームになる足がかりになった。世界ランク1位のアイルランドを撃破する原動力になったように感じるのです。

 チームを変えるのは、勝利かもしれませんし、誰かの言葉かもしれません。そこでキーとなるのが、リーダーたちの存在です。

 主将の姫野和樹選手は言葉よりも、身体を張った激しいプレーでチームを引っ張るタイプ。いまの日本代表には、そんな新主将を支えるベテランがいて、姫野選手がキャプテンシーを発揮できる環境が整っています。W杯2大会で主将を務めたリーチマイケル選手、4大会連続出場のベテラン堀江翔太選手、代表キャプテンの経験がある坂手淳史選手、副将の流大選手らのサポートを受け、姫野選手がパフォーマンスに集中できれば、彼のプレーにみんなが鼓舞される。

 しかも前回大会よりも、ひとりひとりがレベルアップしています。注目したいのが、齋藤直人選手をはじめとした若い選手たち。彼らは学生時代から、強い日本代表を目標にして、高い意識を持ってラグビーを続けてきた世代です。

 ぼくは勝てなかった時代もふくめて12年間も日本代表としてプレーさせてもらいました。とくに前回、前々回のW杯ではラグビーが嫌いになりそうなほどしんどい練習を続けた。それはいまの日本代表も同じです。だからこそ、わかるんです。いまの日本代表は、ひとつのきっかけで結束できる。また日本中を熱狂させてくれるはずだ、と。

【プロフィール】
田中史朗(たなか・ふみあき)/1985年1月3日生まれ。 京都府出身。身長166cmと小柄ながら2011年、2015年、2019年のW杯3大会で活躍した「小さな巨人」。

取材・文/山川徹

※週刊ポスト2023年9月15・22日号

関連記事

トピックス

アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
19歳の時に性別適合手術を受けたタレント・はるな愛(時事通信フォト)
《私たちは女じゃない》性別適合手術から35年のタレント・はるな愛、親には“相談しない”⋯初めての術例に挑む執刀医に体を託して切り拓いた人生
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左・共同通信)
《熊による本格的な人間領域への侵攻》「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ 
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン