第2次岸田再改造内閣の発足を受け、記者会見する岸田文雄首相(時事通信フォト)

第2次岸田再改造内閣の発足を受け、記者会見する岸田文雄首相(時事通信フォト)

 評価されなかったのは、この顔触れでは日本を良くするには力不足、何も変わらないと考える国民が多いことの証左だろう。そんな人たちに新内閣はまるで「ピーターの法則」に陥っているように見えているかもしれない。ピーターの法則とは、組織において有能な人間は出世していくが、その有能さにも限界があり、能力はそのままで出世すると無能ぶりが露呈してしまい、組織の上層部はいずれそんな人間で埋まってしまうという傾向のことをいう。

 有能さの限界というのは、例えば営業職で素晴らしい業績を上げていた人が、管理職には向かずお荷物になってしまうとか、当選回数を重ね人望も実力もあると思われた政治家が閣僚になった途端、無能ぶりを発揮してしまったり、官房長官として有能ぶりを発揮して政権を支えてきたのに、首相としては期待はずれだったというケースもそうだ。

 もとより岸田首相自身、首相として有能なのか無能なのか、判断が分かれる。アピールしていた「聞く力」は聞くだけで優柔不断と批判され、内外には問題山積。それらに対処する人材を適材適所、指名したつもりかもしれないが、政治家として経験があっても、組織や社会全体の問題をきっちり把握して決断し、手腕を振るう能力やスキルは未知数という者もいる。そもそも首相の適材適所が当てにならない。それは非難されながらも長男を、適材適所と政務秘書官に任命したことからも明白だ。

 だが官僚にとっては、ピーターの法則が生じる方がやりやすいかもしれない。下手に有能な政治家が大臣として就任してしまえば、自分たちの思うように物事を動かせなくなる可能性がある。あれこれ意見を言われ、指示を出され、主導権を握られる。トップが変わる度に現場が振り回されては、組織としては煩わしいはずだ。国民のためとリーダーシップを発揮し大ナタを振るうより、現状の体制のまま自分たちが主導できる無能なトップの方が、官僚組織としてはありがたいだろう。

 新内閣にはピーターの法則があてはまるのか。次の世論調査の結果に注目したい。

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