「日本語の勉強は2回しかしていない」と話すディマさん
まぜまぜになる、という表現も『分からないことの手触り』があって面白い。ひらがなばかりだと、単語が見えない、すぐに判別できない。その感覚はよく分かる。『日本語を読む目』を持っているのだなあと思う。
文章を読んで頭の中で音声にする。漢字は、読み方が分からないものがあっても字面で意味を把握する……勉強のための勉強はほとんどしなかったというディマさんだが、なんだかテストは得意そうだ。
「全然勉強しないで、ノリでN1を受けたことがあります。落ちたけど、そんなに難しいとは思わなかった。でも読解は、日本の理屈を理解している必要があると思いました。外国人的には難しい。何が難しいかというと、問題を作る人は『日本人の考え方』で作っているから。それが分からないと正しい答えが選べない」
中学や高校の国語、長文読解のテストを思い出して欲しい。『作者の言いたいことは何か』『この文章の内容を表しているものはどれか』という設問が必ずあった。四択の中から答えを選ぶというものだが、ディマさんはそこに『日本の理屈』が入っているというのだ。
「私が考える答えと、問題を作る人の考えはいつも真逆。読解だけが0点だったこともあります。テキストの内容が理解できても、間違えてしまう。
読解問題の解き方が分かったのは、日本に来てから。日本語学校の先生方に『考える必要はない。問題文の中に答えがあるからそれを探せばいい』って言われて、そうか、考えるから間違えるのか! と思った。ただ読んで、答えに辿り着ければいいんだって」
(第3回に続く)
【プロフィール】
工藤ディマ(くどう・ディマ)/2000年生まれ、ウクライナ・キーウ出身。2022年に家族と離れ単身で来日。公開中の映画『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』で主人公ルスランのライバルとなる三兄弟の末っ子、ロデー役で声優デビューを果たす。
◆取材・文 北村浩子(きたむら・ひろこ)/日本語教師、ライター。FMヨコハマにて20年以上ニュースを担当し、本紹介番組「books A to Z」では2千冊近くの作品を取り上げた。雑誌に書評や著者インタビューを多数寄稿。