100年に一度の大規模再開発によって、以前よりもダンジョン化が深刻になる可能性は否定できない。さらに迷いやすい渋谷になってしまったら、せっかくの大規模再開発の効果が薄れてしまう。
例えば、銀座線のホームが2020年1月に、JR埼京線のホームが2020年6月に移設された。これらも一連の大規模再開発の一環といえるが、銀座線ホームの移設によって乗り換えに要していた時間は約4分から約2分へと短縮された。
所要時間の短縮は渋谷の利便性を高めることにつながるが、それも乗り換え順路を正確に把握してこそ意味がある。目まぐるしく変貌する渋谷駅に戸惑い、逆に乗り換えに要する時間が増えれば、「使いづらい」「迷いやすい」という印象を強くしかねない。
大規模再開発で目まぐるしく変わる渋谷駅で、その順路を正確に把握できる人は決して多くない。大規模再開発に取り組む東急・東急不動産は動線をわかりやすくする対策をしているのだろうか?
東急・東急不動産2社に対して、これらの質問をしてみた。両社ともに「アーバンコアを整備することで動線をスムーズにした」と回答した。
アーバンコアとは、渋谷の地形を克服するためのスムーズな縦移動の動線整備の手法でその第1号が渋谷の大規模再開発では渋谷ヒカリエに設置されている。渋谷ヒカリエのアーバンコアは、地下3階から地上4階までを吹き抜け空間でつなぐ。また、渋谷ストリームやShibuya Sakura Stageにもアーバンコアが整備された。
アーバンコアが画期的な動線システムで、縦移動の労力を軽減することは理解できる。しかし、アーバンコアが「迷いやすい渋谷」の緩和・解消につながるわけではない。その点について質問すると、
「そのほかにも、渋谷駅前サインガイドラインに基づいて2019年11月に渋谷駅の地下出口番号を変更しています。この変更は、渋谷駅の利便性と街の回遊性の向上を目的にしたものです。具体的には地下出入口番号はエリアごとにアルファベットを付記し、各出入口をアルファベットと数字を組み合わせで表記しました。変更後の地下出口番号は、地上の街の構造を鑑みて渋谷周辺を4つのエリアに分けて道玄坂方面を起点に時計回りでA~Dに設定してわかりやすくしています。この地下鉄番号の変更は、東急だけの取り組みではありません。渋谷区をはじめ渋谷と関係のある企業など官民が協力した成果です」(東急広報部担当者)