Shibuya Sakura Stageと渋谷ストリームの間には、JRの線路をまたぐ南北2本の自由通路が架橋された。2024年にはJRの新改札口も開設予定

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 昨今、渋谷駅周辺は大規模開発が相次ぎ、2012年4月には渋谷ヒカリエが、2018年9月には渋谷ストリームが、2019年11月には渋谷フクラスが、同じく2019年11月には渋谷スクランブルスクエア(東棟)が続々と竣工した。

 これら大規模再開発の事業主体はそれぞれ異なるが、実質的に渋谷を本拠地とする東急と東急不動産の2社が再開発事業を主導した。

 両社はどちらも社名に”東急”がつき、渋谷を本拠地にしている。そうしたこともあって、2社はまったく同じグループと思われがちだが、少し異なる分類になる。

 東急不動産は1953年に東急電鉄の不動産部門が分離独立する形で発足した歴史があり、確かに東急電鉄とは縁がある。しかし、歳月とともに東急不動産は独自のグループを形成している。どちらもロゴマークのデザインは同じだが、鉄道系の東急は赤、不動産系の東急不動産は緑とカラーリングが異なっている。両社は歳月とともに東急系は東急電鉄の沿線開発を、東急不動産系は都市開発を中心として事業が行われるなど、企業文化や沿線開発のスタンスも微妙に違いを見せるようになった。ところが、鉄道事業の位置づけを変えざるをえない社会の変化が進んだ。

 東急電鉄はその沿線で暮らしている、それだけで一種のステイタスにもなっていた。実際、東急線は東横線や田園都市線が屈指の人気を誇り、これら2路線は住みたい街の常連になっている。その不動産事業の価値は、鉄道事業があってこその存在だった。

 しかし、少子高齢化・人口減少といった時代を迎えて、鉄道の利用者減は誰の目にも明らかになっている。そうした情勢もあり、東京急行電鉄株式会社は2019年に東急株式会社へと商号を変更した。同時に、鉄軌道事業を新たに設立した東急電鉄株式会社へと移管した。

 前述のように、東急は鉄道の会社として沿線開発をはじめ不動産事業にも取り組んでいた。2019年の商号変更および鉄軌道事業の移管は、東急が事業の主軸を鉄道から不動産へと移したことを鮮明にしたといえる。それにより、関係が無いわけではないが別の事業会社であった東急不動産と東急、2つの不動産事業を手がける会社グループが明確に誕生した。これら東急を冠する2社によって渋谷の大開発が進められていき、街は変貌を遂げていく。

ダンジョン化する渋谷に対して東急と東急不動産が提示する解決策

 渋谷は、その地名に「谷」の文字があることからも窺えるように、すり鉢状の地形になっている。渋谷駅はすり鉢の底にあたる場所に立地し、駅を出てどこへ行くにも上り坂で、周囲には高層のビルが立ち並ぶ。そうした地形の影響もあり、銀座線はビルの3階にホームがあるという不思議な構造だった。

 さらに渋谷駅の地下は広大で、そうした都市構造ゆえに立体的で迷いやすい。そのため、”渋谷ダンジョン”と揶揄されることも珍しくなかった

 迷いやすいという評判は、東急2社をはじめ渋谷を地盤とする行政・企業・商店・住民にとって好ましい話ではない。なかでも、東急は鉄道やバスを運行する交通事業者だから、迷いやすいは大きなマイナスになる。

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