東の庭には数十ものお地蔵さんが祀られている
明治古都館を眺めつつ、東の庭に行ってみましょう。お庭も石仏や灯籠など展示物がいろいろあるけど、東の庭には数十ものお地蔵さんが祀られているのです。しかも、顔も判別できない、限りなく「石」に近いものも。これらは方広寺の石垣の「裏込」(うらごめ)だったそう。裏込とは石垣の裏に詰め込むやや小型の石のことで、昔の平常展示館を建てる時に、石垣があったところの地中から出てきたそうだ。お地蔵さんを裏込に使うとはなんちゅう罰当たりな……せやから大仏殿燃えたんとちゃうか? と思ってしまうけど、戦国時代にはよくあったことだそう。とはいえ、裏込から解放されたお地蔵さんたちは可愛い前掛けをかけてもらって、京博の片隅で穏やかに余生を過ごされているように見えます。
天然石の壁に浮かび上がる「狐の顔」
では、平成知新館に戻って、中へ入りましょう。入って左はガラス越しの光が溢れるグランドロビー。そこの広々した壁の、消火栓の右上あたりを見てください。ドイツのジュライイエローという天然石の壁なのですが、そこに白い線で、何かが浮かび上がっています。よーく見てみると、狐の顔に見える線が浮かんでいます。最初は何もなかったのに、だんだん浮かび上がってきたそう。そこで思い出してください。先に行った、豊国神社の中の槇村稲荷神社。このお狐さん、この神社のちょうど南に浮かんでいるのだ。そしてさらにまっすぐ南にあるのが、お稲荷さんの総本宮、伏見稲荷大社! 狐の通り道でもあるのでしょうか?
平成知新館にある壁に狐の顔に見える線が浮かんでいる
お稲荷さんといえば、商売繁盛の神様。京博の取材でグランドロビーを通りかかると、手を合わせていましたが、そのおかげかどうか、わたしがこの11月に出したマンガ『京博深掘りさんぽ』が、発売1週間で重版決定! びっくりです。お狐さんのご利益があったのかどうかわからないけど、今もグランドロビーに行くと、つい手を合わせてしまいます。
そんなわけで、京博は魅惑の見どころがいっぱい! 展示とともに、京博の歴史と不思議をどうぞご堪能してくださいませ。
【プロフィール】グレゴリ青山(ぐれごり・あおやま)/漫画家、イラストレーター。京都市生まれ。新撰組で有名な壬生で生まれ育つ。現在は京都府亀岡市在住。『京都深掘りさんぽ』等、京都が題材の著書多数。近著に『グレさんぽ コロナとか養蜂とか京都とか』。 ※2024年1月2日~『京博深掘りさんぽ』原画展を開催します。場所は京博館内ミュージアムショップ奥にて。
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