芸能

東京漫才を知るための通史と漫才協会ドキュメンタリー映画 その「読みどころ」「見どころ」

2月6日に行われた『漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々』の完成披露上映会(撮影/国府田利光)

2月6日に行われた『漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々』の完成披露上映会(撮影/国府田利光)

『東京漫才全史』(筑摩選書)の著者・神保喜利彦氏は、現代の東京漫才の祖と言われる東喜代駒師匠が、地元群馬県館林の生まれと知り、親近感を持ったのがきっかけで東京漫才の歴史を調べ始めた。

 1000年以上の歴史を持つ祝福芸「萬歳」という源流から、大正初期に関西から漫才が入ってきたときの情勢。関東大震災を経て東京漫才が生まれ、太平洋戦争を乗り越えての復活。一時は時代の寵児となり、その地位を向上させた功労者など、数多くの芸人やその遺族、関係者や研究者を直接訪ねて、400ページ以上の通史を完成させた。

 漫才協会外部理事でもある高田文夫氏はその仕事を「おれもいろんな漫才の本を読んできたけど、昭和初期など断片的な時代時代で書いてる人はいるんだよ。でも、通してこうやって書いた人は、今までの歴史上いなかった」と高く評価。

 2023年6月より漫才協会会長をつとめるナイツ・塙宣之氏も「最初はすごく昔のことで、知らないことばかりだったけど、読んでいくうちに知っている芸人につながってくるのが面白い」と称賛する。

塙宣之「これを観たら東洋館に行きたくなるように」

 そして、ドキュメンタリー映画『漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々』は塙氏にとって初の監督作品となる。

「漫才の歴史もちょっとわかりつつも、120組以上を擁する漫才協会の現状とか、実情とか。これを観たら、無性に漫才を見に東洋館へ行きたくなるようにと念じて製作しました」

 青空球児・好児、おぼん・こぼんからU字工事、ロケット団、錦鯉など加盟する面々の他、爆笑問題、サンドウィッチマンなど東京漫才のスターも友情出演。

 テレビ全盛の時代に、あくまで「舞台」にこだわり続ける面々をカメラが丹念に追う。

「ドキュメンタリーとして撮ったところに価値があると思います。早く劇場で観たい」(神保氏)

 ナレーションは小泉今日子とナイツ・土屋伸之、高田氏も題字と「お目付役」で参加している。3月1日(金)より、東京・角川シネマ有楽町他で公開。

【プロフィール】
高田文夫(たかだ・ふみお)/1948年東京都渋谷区生まれ。日本大学芸術学部を卒業すると同時に放送作家に。『ビートたけしのオールナイトニッポン』『オレたちひょうきん族』など数々のヒット番組を生む。落語家としても立川藤志楼を名乗り、1988年に真打昇進。1989年にスタートした『ラジオビバリー昼ズ』(ニッポン放送)は2024年で35周年。

塙宣之(はなわ・のぶゆき)/1978年千葉県生まれ。2000年に土屋伸之とナイツを結成。漫才新人大賞(2003年)、文化庁芸術祭大衆芸能部門優秀賞(2013年)、芸術選奨大衆芸能部門文部科学大臣新人賞(2016年)、浅草芸能大賞大賞(2022年)など受賞多数。2023年6月より漫才協会会長。初監督作『漫才協会 THE MOVIE 舞台の上の懲りない面々』が3月1日(金)より、東京・角川シネマ有楽町他で公開。

神保喜利彦(じんぼ・きりひこ)/1996年群馬県生まれ。國學院大學卒。学生の頃から芸能研究を手掛け、研究サイト『東京漫才のすべて』『上方漫才のすべて』を運営している。2021年より演芸研究誌『藝かいな』を月刊で刊行中。近刊に、漫才の源流から現代まで、数多くの芸人やその遺族、関係者や研究者を直接訪ねて完成した東京漫才の通史『東京漫才全史』(筑摩選書)。

※週刊ポスト2024年3月8・15日号

関連記事

トピックス

〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
〈# まったく甘味のない10年〉〈# 送迎BBA〉加藤ローサの“ワンオペ育児”中もアップされ続けた元夫・松井大輔の“イケイケインスタ”
NEWSポストセブン
Benjamin パクチー(Xより)
「鎌倉でぷりぷりたんす」観光名所で胸部を露出するアイドルのSNSが物議…運営は「ファッションの認識」と説明、鎌倉市は「周囲へのご配慮をお願いいたします」
NEWSポストセブン
逮捕された谷本容疑者と、事件直前の無断欠勤の証拠メッセージ(左・共同通信)
「(首絞め前科の)言いワケも『そんなことしてない』って…」“神戸市つきまとい刺殺”谷本将志容疑者の“ナゾの虚言グセ”《11年間勤めた会社の社長が証言》
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“タダで行為できます”の海外インフルエンサー女性(26)が男性と「複数で絡み合って」…テレビ番組で過激シーン放送で物議《英・公共放送が制作》
NEWSポストセブン
ロス近郊アルカディアの豪
【FBIも捜査】乳幼児10人以上がみんな丸刈りにされ、スクワットを強制…子供22人が発見された「ロサンゼルスの豪邸」の“異様な実態”、代理出産利用し人身売買の疑いも
NEWSポストセブン
谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン