客引き防止を呼び掛けながら、JR錦糸町駅周辺の繁華街をパトロールする地元住民ら(イメージ、時事通信フォト)
「僕が客を連れていっていたお店は、地元のアミューズメント企業が運営していた飲食店でした。コロナ禍で客が入らず、とにかくキャッチを頑張りました。月に30万もらうこともあれば、数万しかならないこともありました。キャッチのほとんどがアルバイトの大学生かフリーターで、ヤクザとか反社の人はおらず、違法ですが、楽しく仕事していましたね」(中村さん)
あまりにあっけらかんとした口調に驚かされるが、違法であるにも関わらず後ろ暗さを感じさせないのは中村さんだけではない。彼とは別の複数の元キャッチに話を聞いているが、罪の意識に苛まれている、という人はゼロで、キャッチの仕事は「楽しかった」「稼げた」と声をそろえる。また、客を連れて行った店がアミューズメント系や風俗産業など、メイン事業が飲食店経営ではない事業者の運営であることも共通していた。
「経営者からは、警察や役所の人間になんか言われたら店の名前は絶対に出すなと言われていました。まあ、僕が客なら絶対キャッチの店にはついていかないです、損するから(笑)」(中村さん)
筆者は、中村さんが客を連れて行っていたという千葉県内の店を訪ねたところ、若い従業員が応じたが、すでに店名が変わっていた。さらにすぐ近くにあった、居酒屋の運営元であるアミューズメント系企業・X社を訪ねたが「飲食店はやっていない、関係ない」の一点張りで取材に応じることはなかった。
しかし、のちに所管の保健所への届け出を調べたところ、やはり当該居酒屋の名前は変わっていたものの、運営元はX社のままであることも確認できた。取材に応じず今後ものらりくらりと、違法キャッチに依存した営業活動を続け、客からの詐取をやめない腹づもりということなのか。飲食業は自分たちの本当の仕事ではないとでも思っていて当事者意識が薄いと、遵法意識も低くなるのだろうか。
違法キャッチも、キャッチを使う飲食店も、何年経ってもなくならない。それは、どんな理由があるにせよ、違法キャッチについて行き、店を利用する客がいなくならないからであることに他ならない。違法キャッチやプチぼったくりを繰り返す人々や店に行って、本当に楽しい時間を過ごせるのか、満足できるのか。利用者には、もっと冷静になって考えてほしいのである。